2016年9月16日金曜日

薄情

その老婦人は酒に酔っていた。

かなり。

一体どこでこんなに飲んだのか?

彼女が来た方角にある飲み屋、

といえば、

昔、

僕も通っていた立ち飲み屋しかないと思うのだが、

この人があそこで、

こんなになるまで飲んだのだろうか?

足元がふらついて、

雨も降るのに、

そのまま帰したのか?

そもそも、

なんでこんなに飲んだのか?

などなど、

聞きたいことはいっぱいあったけど、

僕の約束の時間も迫っている。

とにかく、

自転車置き場の管理所に行って、

傘を貸してくれと頼んだら、

快く、

一本くれた。

彼女に持たせ、

とにかく駅の屋根のあるところまで行きましょうというと、

彼女は、

そこからタクシーに乗って帰るかえ大丈夫だという。

なんども、

ありがとうありがとう、

と笑みを浮かべて。

あ〜薄情な僕は、

その言葉を信じることにして、

彼女と別れ、

駅の改札をくぐった。

白杖の人の時もそうなんだけど、

どうして、

もう一押しができないかな?

俺は。

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