2019年11月8日金曜日

脱出

12年前、

酒浸りの末期症状のとき、

それは苦しかった。

手が震え文字さえまともに書けなかった。

それでも酒が切れるといたたまれず、

死んでしまうのではないかと大げさではなく思っていた。

そんなところからなぜピタッと止めることができたのか。

正確にいつ最後の酒を飲んだのか正直覚えていない。

ただ言えるのは、

このまま飲み続ければ死ぬなと実感したことは大きかった。

死にたくない。

そう思ったとき、

不思議なほどピタッとやめられた。

要は精神的なものだったのかもしれない。

だっていわゆる禁断症状的なものはなかったのだから。

どん底で悟る。

それは僕の典型的な性格だ。

同時に逆説的に弱い部分でもあるように思う。

確信的にアル中の道に踏み込みながら、

結局その道を行ききることなく、

死ぬかも知れないと思った途端、

怖くなって引き返したとも言える。

本当に覚悟があったなら、

そのまま死んでいただろう。

その優柔不断さに救われた。

なかなかやめられなかった僕だが、

やめてからは一度も再飲酒はしていない。

多くの人は止めては飲み、

また止めては飲むの繰り返す。

僕は止めるまでは通院しながらも1日たりとも飲まない日はなかった。

なのに止めた後はピタッと止めて今日に至る。

アル中になる道は大体皆同じだけど、

止め方には人それぞれの道があるもんだ。

僕は恵まれていた。

そのことについてはまたいずれ。

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