2008年6月21日土曜日

不意打ち

会社まで雨は大丈夫だろうと、
傘を持たずに出かけたが、
あと少しの所で降り出した。

コンビニでビニール傘を買おうかとも思ったけど、
すぐに止みそうだったから、
そばの旅行代理店の軒先に避難した。

雨宿りなど久し振りだった。
激しく斜めに降る雨粒をボーっと見ながら、
音楽を聞き、
煙草を吸っていると、
背後からビニール傘がニュッと出てきた。

振り返ると、
ぼくより少し年かさの男性が、
何やら言っている。

親切に貸してくれるのか?
そう考えながらイヤホンをはずすと、
男性は、


「これあげるから、ここで煙草吸わんといて」


断わっておくけど屋外だ。
雨宿りしていたのはぼくだけ、
それもほんの数分だった。

ぼくは、
傘を貸してくれる親切、
という最初の思い込みを引きずりながら、
いや、
この男性は怒っているのだ、
ということを中途半端に悟りながら、
ただ傘を受け取り、
その場を立ち去った。

ふだん灰皿のない場所では、
たとえ屋外でもぼくは煙草は吸わない。
ただ突然の雨という状況で、
ポッカリ空いた時間に一服したのだ。

しかし男性にはそれが気に入らなかった。
ぼくの行為が誰かの機嫌を損ねた。
それは否定できない。

ぼくが無言で(何か言ったかもしれないけど覚えていない)立ち去ったのは、
自分の行為に何か問題がある可能性を否定できなかったからだ。
一方で謝らなかったのは、
悪いことはしていないという気持ちもあったからだろう。

雨はそれから1分もしないうちに止んだ。
ぼくは傘を畳み、
ついさっきのやり取りを何度も思い出した。

なぜか悲しくなった。


●本気でボーカルを目指すなら、喫煙はもってのほかという意見は絶対あると思うし、そのとおりであるとも思う。でも今は吸っているし、当分やめることもないだろう。字にできる理由はないし、書いても全部言い訳としか受け取られないだろうし、そのとおりだろう。

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