背中が痛くて病院に行ったら、
末期の肺癌と診断され、
手の施しようがなかったという。
57歳。
若すぎる死。
その先輩は、
昔気質の親分肌っぽいところがあって、
正直、
僕は苦手だった。
直属の上司だったこともあったけど、
忘れもしない東日本大震災の直前、
その人はある事件の当事者となって、
僕らの前から消えた。
それ以来、
たまに姿を見かけることはあったけど、
話をすることは一度もなかった。
最後に見かけたのは、
そう遠くないある日、
会社から帰る姿だった。
今から思えば、
辛そうに歩いていたのかもしれないけど、
その時の僕の抱いた感想は、
あぁ老けたな、
だった。
あの事件で一線を離れ、
当時のよく言えば覇気のようなものが、
抜け落ちてしまっていた。
それは遠くない未来の自分の姿のように思えた。
その人も喫煙者だった。
亡くなったという知らせは、
瞬く間に、
でも密かに会社中に広まり、
以来、
喫煙室はガラガラだ。
僕はガラガラの喫煙室で、
一人紫煙を吐き出した。
0 件のコメント:
コメントを投稿