2017年10月6日金曜日

紫煙

会社の先輩が亡くなった。

背中が痛くて病院に行ったら、

末期の肺癌と診断され、

手の施しようがなかったという。

57歳。

若すぎる死。

その先輩は、

昔気質の親分肌っぽいところがあって、

正直、

僕は苦手だった。

直属の上司だったこともあったけど、

忘れもしない東日本大震災の直前、

その人はある事件の当事者となって、

僕らの前から消えた。

それ以来、

たまに姿を見かけることはあったけど、

話をすることは一度もなかった。

最後に見かけたのは、

そう遠くないある日、

会社から帰る姿だった。

今から思えば、

辛そうに歩いていたのかもしれないけど、

その時の僕の抱いた感想は、

あぁ老けたな、

だった。

あの事件で一線を離れ、

当時のよく言えば覇気のようなものが、

抜け落ちてしまっていた。

それは遠くない未来の自分の姿のように思えた。

その人も喫煙者だった。

亡くなったという知らせは、

瞬く間に、

でも密かに会社中に広まり、

以来、

喫煙室はガラガラだ。

僕はガラガラの喫煙室で、

一人紫煙を吐き出した。

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