震災の夜、
被災地には満天の星空が広がったそうだ。
8年が過ぎて、
早くも風化が心配されている。
メディアの扱いも徐々に分量が減っている。
新しい「ネタ」がないらしい。
そんなこと言わず、
毎年、
あの頃の報道やドキュメントを繰り返し流せばいいと思う。
政府は復興が進んでいると言う。
確かに土地のかさ上げや新しい建物、
除染もそれなりに進んでいるようだ。
被災者の心にも少し変化が出ているように報じられる。
でも僕はあの日のことを昨日のことのように覚えている。
自宅のテレビで津波を見て、
出勤の途中、
梅田を楽しそうに歩く人たちを見て、
今大変なことが起きているんだぞと、
心の中で言い続けた。
怒涛のような仕事が続いた。
はっきり言って、
あんまり何をしたのか覚えていない。
そして原発が爆発した。
その衝撃は物凄かった。
年月がたてば人の記憶は薄れる。
悲しみや痛みも徐々に薄らぐだろう。
それは人間の生存本能として当然かもしれない。
あの時のショックをずっと持ち続ければ、
おそらく精神を病んでしまう。
忘れることは個々人にとっては必要なことかもしれない。
でもだからこそ、
年に一回は国民みんなが思い出さないといけない。
東日本大震災が風化するようでは、
熊本地震も西日本豪雨も北海道地震も、
あっという間に忘れられてしまう。
被災者の皆さんには辛いかもしれないけど、
毎年、
あの津波や原発の爆発の映像は流すべきだと思う。
何と言っても南海トラフ地震が迫っているのだ。
あの年の秋、
被災地に行っておいて良かった。
荒涼とした名取市閖上地区で、
ふとみたグーグルマップ。
そこに映ったのは、
住宅や商店が立ち並ぶ確かな町だった。
それが跡形もなく消えていた。
一瞬にして町が消えてしまったのだと思い知った。
あの空気を吸っておいて本当によかった。
そして、
あの頃思った気持ち。
生き残った者の義務。
僕はその義務を果たしているだろうか。
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