ジャズを曲がりなりにもやっていると、
1960年あたりのニューヨークシーンを意識せざるを得ない。
麻薬や酒に溺れ、
にも関わらず歴史的名盤を作ってきた時代。
時代が違うのでだから果たせぬ夢なんだけど、
多くの人がその頃の演奏をお手本にしている。
でも時代は21世紀だ。
あの頃と同じような演奏をすることは不可能なんですよ。
生活習慣や社会制度、
何よりテクノロジーの進歩。
50年経った今となってあの頃の演奏をすることは、
現代人が時代劇を演じるようなもので、
真似はできても心底同じ演奏などできるわけがない。
僕らは彼らより半世紀後の世界に生きていて、
彼らが知らなかった世界を知ってしまったし、
暮らしも全然違う。
世捨て人ならともかく、
現代に生きる人間に当時の音は出せない。
先日、
ニューヨークで友人がミュージシャンを連れて録音をしてきた。
ドラムを録音するだけでマイク12本をたてたそうだ。
半世紀前なんかだと絶対にあり得ないことだ。
録音方法も演奏も現代的にソフィスティケートされて、
テクニックもうまい。
で問題なのは、
そうやって録音した演奏が人の心を打つかどうか。
半世紀前にお手本を求めるなら、
きっと物足りないものになるだろう。
でも彼らは現代のジャズを演奏している。
違う観点で聞かなければならない。
ただ、
そういう視点で聞いたとしても、
肝心なのは人の心を動かすかどうかだ。
うまい下手ではない。
なぜか劣悪な環境でボロボロのヤク中が演奏した録音が、
21世紀の僕らの心を捉えてやまないのはなぜだろう。
その辺は不思議な話だと思う。
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