朝。
玄関先の土の上に、
蝉が一匹。
近くに抜け殻と、
そこから出てきたであろう穴が開いている。
羽はうすい黄緑色で、
どうやら羽化したばかりらしい。
しかしよく見ると、
羽が片方しかない。
どうやら、
何かの間違いが起きたようだ。
そっとつまみあげて、
近くの木にとまらせてやろうとしたが、
すぐに地面にポトリ。
しかたない。
好きにすればいい。
蝉は土の上をもぞもぞと動いていた。
夕方。
蝉がいたところを見て驚いた。
仰向けになった蝉は、
蟻に全身を覆われ、
真っ黒になって手足を動かしている。
あまりに可哀そうなので、
拾い上げ、
手で蟻を払い落そうとするが、
数が多すぎて、
埒が明かない。
仕方なく、
バケツの水に漬けて、
ようやく蟻から解放してやり、
自転車の前かごに置いてやった。
翌朝。
蝉は死んでいた。
これは母の体験である。
ぼくは最初、
ふーんふーんと聞いていたが、
蟻に覆われた蝉のあたりで、
「カワイソウニ!」と思わず声に出した。
地中で何年も生きたものの、
ついに、
一度も鳴くことなく死んでしまった蝉。
わが身を重ねたのか。
●じゃず家のセッションで、ピアニストの押領寺さんとその友人の方と立ち話。友人の方がぼくの声を「小林桂に似てますね」とおっしゃるので、自分の声は彼のようにハスキーだったっけと、押領寺さんに尋ねると「郷ひろみに似てるんじゃないですか」と言われた。どちらも身に余る光栄だけど、小林桂と郷ひろみの両方に聞こえる声って???●生まれて初めて自転車を盗まれた(はず)。そう、あの駐輪場から。ショック。
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