2008年7月29日火曜日

かけがえのない人間

カラオケで満点を連発するおばあちゃんがいて、
テレビで紹介していたのだが、
縁側で鼻歌まじりで口ずさんでるっていう感じなのに、
本当に次々満点が出るから驚いた。

どだい、
歌を採点するという行為自体に無理があるわけで、
それも機械的に行うのだから、
そんな「穴」もあるのだろう。

魅力に点数は似合わない。
ある人がその人の主観で魅力を点数化することはできても、
客観的に人や芸術の良し悪しの採点はできない。

そんなことは誰でもわかっているのだけど、
いまの日本人は、
他人の評価にあまりにも振り回されていると、
「かけがえのない人間」(上田紀行著、講談社現代新書)は言う。

この本をぼくなりに解釈すると、
特に若い人は、
良い評価を得ること自体が目的になってしまい、
人間関係において「いかに嫌われないか」に、
最大限の労力を払っているみたいだ。

「暗い」と評価されることは、
彼らが最も避けたいことらしく、
とにかく「明るい」「面白い」
そう思われることに腐心し、
本当に思ってないことでも周囲に合わせようとする。

「KY」という流行語が象徴しているのは、
自分をひた隠しにしてでも周囲に同調し、
良い評価を得ることが目的化してしまった現代そのものだ。

「一人一人がかけがえのない人間」という認識は素晴らしいけど、
だからといってその根拠のない「かけがえのなさ感」を守るために、
あえて深く他人とかかわらい、
一見クールでローリスクな生き方は、
ぼくは根が浅いように思う。

著者は、
自分のたどってきた人生(これが相当なもの)を振り返りながら、
もっと社会と関わり、
愛されるのを待つより愛せ、
そして怒るときには怒れと説く。
自信がついてから行動するのではなく、
自信は行動する中からこそ生まれるものだと。

何か甘い宗教本のように思われるかもしれないが、
そんなんじゃない。
ぼくはこの本を断然勧める。
立ち読みでいいから、
手にしてみて欲しい。

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