数年前、
建築家の安藤忠雄氏の講演を聞きに行ったことがある。
その時にぼくが質問して、
返って来た答えをよく覚えている。
「僕から施主に押し付けたことは一度もありません」
その時はウソだろと思った。
建築家と施主というのは、
協力関係ではあるけれど、
建築家がアーティスティックな理想を貫こうとすれば、
施主ともめることは容易に想像できる。
安藤氏があれほど個性的な作品を残せる鍵は、
彼に施主を「その気にさせる」話術があるに違いない。
その時はそう思っていた。
でも、
先日の情熱大陸を見て少し考えが変った。
安藤氏は現在、
中国で猛烈に働いている。
しかし、
中国の施主はワガママの極みだ。
建築が始まってから、
次々に無理難題、
設計変更を押し付けてくる。
日本では考えられないことだろう。
でも、
安藤氏は、
ぶち切れそうになりながら、
結局は施主の要望に答えるのだ。
もちろん、
中国は今世界で一番「おいしい」市場だから、
施主を失いたくないという気持ちもあるだろう。
でも、
それだけではない、
安藤氏の人柄というか、
「しゃーないなー」みたいな大阪人気質が、
施主のわがままを引き受けさせているように感じた。
ワガママすら楽しむというか。
72歳にして世界の現場を駆け巡り、
手帳にビッシリの予定をこなしていく安藤氏。
恐ろしいフットワーク。
他人のワガママに付き合いつつ、
自分も曲げない。
それを可能にするのはやっぱり体力なんだなと、
つくづく思った。
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