2014年4月8日火曜日

我儘

数年前、
建築家の安藤忠雄氏の講演を聞きに行ったことがある。

その時にぼくが質問して、
返って来た答えをよく覚えている。

「僕から施主に押し付けたことは一度もありません」

その時はウソだろと思った。

建築家と施主というのは、
協力関係ではあるけれど、
建築家がアーティスティックな理想を貫こうとすれば、
施主ともめることは容易に想像できる。

安藤氏があれほど個性的な作品を残せる鍵は、
彼に施主を「その気にさせる」話術があるに違いない。

その時はそう思っていた。

でも、
先日の情熱大陸を見て少し考えが変った。

安藤氏は現在、
中国で猛烈に働いている。

しかし、
中国の施主はワガママの極みだ。

建築が始まってから、
次々に無理難題、
設計変更を押し付けてくる。

日本では考えられないことだろう。

でも、
安藤氏は、
ぶち切れそうになりながら、
結局は施主の要望に答えるのだ。

もちろん、
中国は今世界で一番「おいしい」市場だから、
施主を失いたくないという気持ちもあるだろう。

でも、
それだけではない、
安藤氏の人柄というか、
「しゃーないなー」みたいな大阪人気質が、
施主のわがままを引き受けさせているように感じた。

ワガママすら楽しむというか。

72歳にして世界の現場を駆け巡り、
手帳にビッシリの予定をこなしていく安藤氏。

恐ろしいフットワーク。

他人のワガママに付き合いつつ、
自分も曲げない。

それを可能にするのはやっぱり体力なんだなと、
つくづく思った。


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