2008年10月8日水曜日

緒形拳

緒形拳が死んだ。
それも二日前にと聞いて、
驚いた。

日本を代表する俳優で、
しかも現役で、
そんなことがあり得るのは、
きっと他聞憚られる事情があるに違いないと、
勘ぐったのは大間違い。

死因はガンだと知り、
前の晩に見たNHKプロフェッショナルの再放送を思い出した。
末期ガン患者専門の、
淀川キリスト教病院で看護師をしている女性が登場。
ぼくは、
親父を昨年末、
ガンで亡くしたので、
つい見入った。

手の施しようのない患者ばかりを相手に、
彼女は笑みを絶やさず、
患者の声に耳を傾け続ける。
当然、
患者の死は日常で、
その度に彼女は涙を流す。

患者が治って退院するのが、
医療が報われる瞬間だとするなら、
彼女たちにその時は来ない。
では、
彼女らをあの場にとどまらせるものは何か。

「この病で死ぬのだと納得した人間は強い」

彼女はそういう意味のことを話していた。

人は必ず死ぬ。
患者がその冷徹な事実に向き合う瞬間。
傍で見ている彼女らにとってそれは、
辛くもあり、
荘厳な光景なのだろう。

死に様は生き様を決定づける。
死がリアルでなお、
前向きに生きる人の輝きは、
茫洋と日々生きる人とは比較にならぬくらい美しかろう。

緒形拳の死に様もまた、
強烈な閃光を放つ。

ぼくの一つの理想だ。


●ノーベル賞に日本人が3人も決まったことは誠に喜ばしい。だが、これで世間の俎上から、緒形拳の死も、個室ビデオ店放火も、全裸で殺されていた幼女も、どんどん拭い去られていく●「明日に向かって撃て」がTUTAYAに返ってきたので早速借りた●いよいよ今日GT最終決戦だ。

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