緒形拳が死んだ。
それも二日前にと聞いて、
驚いた。
日本を代表する俳優で、
しかも現役で、
そんなことがあり得るのは、
きっと他聞憚られる事情があるに違いないと、
勘ぐったのは大間違い。
死因はガンだと知り、
前の晩に見たNHKプロフェッショナルの再放送を思い出した。
末期ガン患者専門の、
淀川キリスト教病院で看護師をしている女性が登場。
ぼくは、
親父を昨年末、
ガンで亡くしたので、
つい見入った。
手の施しようのない患者ばかりを相手に、
彼女は笑みを絶やさず、
患者の声に耳を傾け続ける。
当然、
患者の死は日常で、
その度に彼女は涙を流す。
患者が治って退院するのが、
医療が報われる瞬間だとするなら、
彼女たちにその時は来ない。
では、
彼女らをあの場にとどまらせるものは何か。
「この病で死ぬのだと納得した人間は強い」
彼女はそういう意味のことを話していた。
人は必ず死ぬ。
患者がその冷徹な事実に向き合う瞬間。
傍で見ている彼女らにとってそれは、
辛くもあり、
荘厳な光景なのだろう。
死に様は生き様を決定づける。
死がリアルでなお、
前向きに生きる人の輝きは、
茫洋と日々生きる人とは比較にならぬくらい美しかろう。
緒形拳の死に様もまた、
強烈な閃光を放つ。
ぼくの一つの理想だ。
●ノーベル賞に日本人が3人も決まったことは誠に喜ばしい。だが、これで世間の俎上から、緒形拳の死も、個室ビデオ店放火も、全裸で殺されていた幼女も、どんどん拭い去られていく●「明日に向かって撃て」がTUTAYAに返ってきたので早速借りた●いよいよ今日GT最終決戦だ。
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