ある夕方、
換気扇の下で煙草を吸っていたら、
ススススススッ
と肉まんのような白い物を手に、
母が近寄ってきた。
次に、
ナイロンでできたポンポンのようなものを、
もそもそと箱から取り出し、
その両方を使ってゴソゴソし始めた。
「ほらっ」
と差し出す両手一杯の泡。
すごいすごい。
石鹸なんや。
それで顔洗うの?
「体も洗えるで」
母はそう言うと、
またしばらく泡立てるのだが
次第に「おかしいなぁ」と首をひねるようになった。
どうしたん?
「ボウル一杯になるはずやねんけど」
どうやら、
実演販売のようにならないので、
不満らしい。
いいやん。
両手一杯で。
またある夕方。
母が流しの下から、
様々な色や形の、
台所用スポンジが一杯入った袋を取り出した。
「これ全部で200円やってん」
余りもんまとめたんやな。
「捨てるのもったいなないやろ」
その数日後。
「やっぱり安物はあかん」
なんで?
「しっとりとせえへん」
母には母なりの理想がある。
●珍しく神戸、大阪、武庫之荘と動き回った休日。
0 件のコメント:
コメントを投稿