「リンカーンはアメリカでコーヒー三杯」
この前のメールを書いた後、
下に降りていくと、
母がいきなり大声を上げる。
「リンカーンはアメリカでコーヒー三杯」
「何それ」
「ウツ」
「はぁ」
「ウツっていう字はこう書くねん」
「…………」
広辞苑に掲載されている漢字で、
最も画数の多い字は「鬱」で27画だ。
ぼくは小学生の時にその事を知ったが、
これまで一度も書いた事はない。
ちなみに広辞苑の最後に出てくる項目は「んとす」のはず。
母が言っているのは、
「鬱」という字の書き方だった。
「リンカーン」つまり「林」の間に「缶」を書き、
「は」つまりワ冠をその下に、
さらに「アメリカ」つまり米を斜めにした※を、
コを90度傾けたやつで受けて、
ヒはそのまま、
右横に「三杯」としてひげ三本。
これで鬱の完成というわけだ。
テレビで紹介していたらしい。
「これで忘れへんわ」と母。
「そうやな、俺もや」
でも、
できるならこんな字、
書かずに暮らしたいよね。
母は笑ってうなずいた。
●明日は早起きして小旅行ですので、これにて御免。
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