2008年11月22日土曜日

閉店

散髪屋の店頭で回っている、
赤と青と白の「渦巻き」は、
動脈と静脈と包帯を表していて、
それは昔、
外科医が散髪を兼ねていたからだと、
何かで読んだことがある。



駅の帰り、
いつもの渦巻きがないことにフト気づいた。
「ABC」という、
身も蓋もない名前の散髪屋さんは、
ぼくが子どものころからあって、
高校生までは通っていた。

順番待ちの椅子で漫画雑誌を読みふけったこと、
新入りの店員に当たると、
子供心に「大丈夫かな」と思ったこと。
きっちりセットしてくれた髪型が恥ずかしくて、
店を出るなり手櫛でぐしゃぐしゃにしたこと。。。



40年は営業していたはずだ。
大学生になって上京してからは、
ついに二度と行く事はなかったけど、
死んだ親父はずっと通い続けていた。

店主が仕事中に倒れたという話を聞いたことがあって、
剃刀を使っている時だったら怖いなと思ったことがある。

ぼくが通っていたころは、
店主がちょうど今のぼくぐらいの年齢だったのだろう。
結局、
後継者がおらず、
店じまいすることにしたのだそうだ。



うちの近所には同じように、
60歳をとうに過ぎた人たちが続けている店がいくつかある。
みな、
今のぼくよりうんと若い時にこの地に店を構え、
一生懸命精を出して働き、
子供を一人前にし、
もはや「余生」という年代に差し掛かっている。



結局、
「ABC」という名前の由来すら知らないままだ。
たぶん大した訳などないのだろう。
同じように長いことやってる喫茶店だって、
「ブルー」とあっさりしたものだ。
そんなことに凝る時代じゃなかったのだ。



閉店したその店の数軒おいた並びに、
黒と金を基調にした美容院が開店準備に追われていた。

「GOLD」というゴージャズな名前のその店は、
これからどんな歴史を刻むのだろう。


●リビングのTVがついに薄型に変身した。我が家にとっては革命的出来事。ハイビジョンって本当にすごい。布袋寅泰の東大寺ライブに見入ってしまった。しばらく病みつきになりそうだ。

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