2008年11月24日月曜日

決壊

小泉毅とは何者だ。

34年前、
つまりこの男が中学生の時、
保健所にペットを「処分」され、
その恨みを晴らすため、
2人の元厚生次官宅を襲い、
3人を殺傷したという、
小泉毅とは何者だ。

十分すぎるほどの物証と、
ご丁寧に住民票まで携えて自首した、
46歳の、
小泉毅とは何者だ。

何の仕事をし、
何を食べ、
何を読み、
誰と話し、
何を考えていたのだ。

あの躯体。
あの振る舞い。

一体どのようにしたら、
そんな理由で人が殺せる人間が出来上がるのだ。

宗教的であれ政治的であれ、
テロであったなら、
百歩譲ってあり得る話だと思っていた。
しかし、
この展開は予想だにしなかった。

男の言っていることを「真に受けている」訳ではない。
ひょっとしたら、
真犯人の身代わり、
または、
何かの洗脳を受けているのかもしれない。
できればそうあって欲しい。

この男の連行写真を見たとき、
真っ先に思い出したのは、
オウム真理教の実行犯たちだった。
あるいは宅間守。

喜びや悲しみはもとより、
怒りや憤りすら感じさせぬ、
それでいて諦観している風でもない目。

人を襲って捕まえられた猛獣のような目。
一体何が「悪」なのか分からぬ目。
いや、
そもそも「悪」とう概念自体が抜け落ちたような目。
「確信犯」という言葉では追いつかない。
誇るわけでも悪びれるわけでもない。
善も悪もない、
人間の姿をした怪物。

想像を超えた「悪」が、
現実に存在するのだとすれば、
心底恐ろしいことだ。

遺族にしても、
事件が落着したって、
これでは悲しみが深まるばかりだろう。

男はただ人が殺したくて、
「動機」など何でもよかったのか。
それとも彼の語る「動機」は、
彼にとって本当だったのか。

テロ、
あるいは通り魔より、
はるかに虚無は大きい。


これは底なしの穴。


小泉毅とは何者だ。

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