小泉毅とは何者だ。
34年前、
つまりこの男が中学生の時、
保健所にペットを「処分」され、
その恨みを晴らすため、
2人の元厚生次官宅を襲い、
3人を殺傷したという、
小泉毅とは何者だ。
十分すぎるほどの物証と、
ご丁寧に住民票まで携えて自首した、
46歳の、
小泉毅とは何者だ。
何の仕事をし、
何を食べ、
何を読み、
誰と話し、
何を考えていたのだ。
あの躯体。
あの振る舞い。
一体どのようにしたら、
そんな理由で人が殺せる人間が出来上がるのだ。
宗教的であれ政治的であれ、
テロであったなら、
百歩譲ってあり得る話だと思っていた。
しかし、
この展開は予想だにしなかった。
男の言っていることを「真に受けている」訳ではない。
ひょっとしたら、
真犯人の身代わり、
または、
何かの洗脳を受けているのかもしれない。
できればそうあって欲しい。
この男の連行写真を見たとき、
真っ先に思い出したのは、
オウム真理教の実行犯たちだった。
あるいは宅間守。
喜びや悲しみはもとより、
怒りや憤りすら感じさせぬ、
それでいて諦観している風でもない目。
人を襲って捕まえられた猛獣のような目。
一体何が「悪」なのか分からぬ目。
いや、
そもそも「悪」とう概念自体が抜け落ちたような目。
「確信犯」という言葉では追いつかない。
誇るわけでも悪びれるわけでもない。
善も悪もない、
人間の姿をした怪物。
想像を超えた「悪」が、
現実に存在するのだとすれば、
心底恐ろしいことだ。
遺族にしても、
事件が落着したって、
これでは悲しみが深まるばかりだろう。
男はただ人が殺したくて、
「動機」など何でもよかったのか。
それとも彼の語る「動機」は、
彼にとって本当だったのか。
テロ、
あるいは通り魔より、
はるかに虚無は大きい。
これは底なしの穴。
小泉毅とは何者だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿