うっかりじゃなく、
確信犯的に。
カツオが波平の盆栽をわざと割ったようなものだ。
結果がどうなるかは、
火を見るより明らかだった。
でもぼくは割った。
それが正しいことなのか。
間違っているのか。
わからない。
善意か悪意か。
それもわからない。
ただ、
ぼくという人間のすべてが、
これまでの人生経験から、
「割るべき」だとぼくに教えていた。
その内なるぼくの言葉に、
ぼくは勇気をもって従った。
ためらいはなかった。
ためらいはなかった。
だから、
「あなたのため」とは言うまい。
ましてや、
「いつかあなたにもわかる」などと、
諭す資格もない。
価値観は人それぞれだから、
ある人にとっては命より守りたいものがあるのかもしれない。
波平にとって盆栽は、
あるいは命より大切かもしれない。
でもぼくは盆栽より波平の方が大切だ。
ただそれだけだ。
正解のない闇の中で、
そのことだけは確かなように思われた。
「情がない」
そう言う声がある限り、
絶対にぼくは薄情者だろう。
許しがたい裏切り者だろう。
ただ、
もしぼくが賢く理屈で考えて行動する人間なら、
一体だれが好き好んで逆鱗に触れようとするだろうか。
避けて通る道はいくらでもあるのに、
だれがあえて火中の栗を拾うだろう、、、
必死になって積み上げて守ってきたものが、
だれかの手で一瞬にして壊された経験はぼくにもある。
だからその「怒り」はある程度分かる。
ぼくはその「怒り」から逃げようとは思わない。
真正面から全部受ける。
その痛みは胸に刻んだ。
一生の傷として。
それがぼくの、
自分がした事への責任の取り方だ。
●また、泊まり明けの日だった。心底疲れた。
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