2010年9月29日水曜日

逆鱗

逆鱗に触れた。

うっかりじゃなく、
確信犯的に。

カツオが波平の盆栽をわざと割ったようなものだ。

結果がどうなるかは、
火を見るより明らかだった。

でもぼくは割った。

それが正しいことなのか。
間違っているのか。

わからない。

善意か悪意か。

それもわからない。

ただ、
ぼくという人間のすべてが、
これまでの人生経験から、
「割るべき」だとぼくに教えていた。

その内なるぼくの言葉に、
ぼくは勇気をもって従った。
ためらいはなかった。

だから、
「あなたのため」とは言うまい。
ましてや、
「いつかあなたにもわかる」などと、
諭す資格もない。

価値観は人それぞれだから、
ある人にとっては命より守りたいものがあるのかもしれない。

波平にとって盆栽は、
あるいは命より大切かもしれない。

でもぼくは盆栽より波平の方が大切だ。
ただそれだけだ。

正解のない闇の中で、
そのことだけは確かなように思われた。

「情がない」

そう言う声がある限り、
絶対にぼくは薄情者だろう。

許しがたい裏切り者だろう。

ただ、
もしぼくが賢く理屈で考えて行動する人間なら、
一体だれが好き好んで逆鱗に触れようとするだろうか。

避けて通る道はいくらでもあるのに、
だれがあえて火中の栗を拾うだろう、、、

必死になって積み上げて守ってきたものが、
だれかの手で一瞬にして壊された経験はぼくにもある。

だからその「怒り」はある程度分かる。
ぼくはその「怒り」から逃げようとは思わない。
真正面から全部受ける。

その痛みは胸に刻んだ。

一生の傷として。

それがぼくの、
自分がした事への責任の取り方だ。

●また、泊まり明けの日だった。心底疲れた。

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