先ごろ芥川賞をとった西村賢太の、
まぁいわば「売り文句」である。
新聞広告によると、
受賞作「苦役列車」は16万部を突破したとか。
同時受賞の「お嬢様」朝吹真理子「きことわ」の方は、
14万部だというからちょっと驚き。
ちょっと前にあった「蟹工船」みたいに、
西村氏の鬱屈した半生が、
今の世の共感を呼んでいるようだ。
「苦役列車」はすでに買ったのだけど、
先にこちらを読み始めた。
見にくいかもしれないが、
「どうで死ぬ身の一踊り」(講談社文庫)である。
短編3作品を収録してあり、
最初の「墓前生活」を読んだ。
藤沢清造という大正時代の、
今やほぼ無名作家の作品にほれこんだ著者が、
その墓参りに石川県七尾市の寺を訪ね、
古い木製の墓碑をもらいうけ、
自宅に飾るまでを描いた短編。
ほぼ実話と思われるが、
他人の墓碑をもらうというのは、
生半可な行為ではない。
ましてや自室に置き共に寝起きするなど、
身内でもない者の仕業としては、
かなりアブナイ部類。
「一歩間違えば」の世界だ。
とにかく西村氏は人生のある時、
藤沢清造なる作家に一瞬にして囚われたのだ。
思うに、
死人に惚れるというのは、
究極の片思いであろう。
きっとこの出会いがなければ、
今の西村賢太は存在せず、
アル中か何かで野たれ死んでいたかもしれないな。
突飛な内容に比べ文章は、
意外なほど端正で読みやすかった。
ゴッホの性格はずいぶん歪であったようだが、
残した作品は現代人の心を射抜く。
作品と作者は切り離して考えられないのだけれど、
とっても嫌な人間であっても、
生み出す作品が珠玉であるということは、
実際にあるということの不思議を、
少し考えた。
同じ時代にこの日本に生きて、
「KAGEROU」を書く人がいて、
「墓前生活」を書く人もいる。
●連合赤軍の永田洋子死刑囚が病死。大抵の若い人にとっては「誰?」だろう。。。
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