2011年2月6日日曜日

墓前

「中卒フリーターで友達ゼロの前科者」

先ごろ芥川賞をとった西村賢太の、
まぁいわば「売り文句」である。

新聞広告によると、
受賞作「苦役列車」は16万部を突破したとか。

同時受賞の「お嬢様」朝吹真理子「きことわ」の方は、
14万部だというからちょっと驚き。

ちょっと前にあった「蟹工船」みたいに、
西村氏の鬱屈した半生が、
今の世の共感を呼んでいるようだ。

「苦役列車」はすでに買ったのだけど、
先にこちらを読み始めた。













見にくいかもしれないが、
「どうで死ぬ身の一踊り」(講談社文庫)である。

短編3作品を収録してあり、
最初の「墓前生活」を読んだ。

藤沢清造という大正時代の、
今やほぼ無名作家の作品にほれこんだ著者が、
その墓参りに石川県七尾市の寺を訪ね、
古い木製の墓碑をもらいうけ、
自宅に飾るまでを描いた短編。

ほぼ実話と思われるが、
他人の墓碑をもらうというのは、
生半可な行為ではない。

ましてや自室に置き共に寝起きするなど、
身内でもない者の仕業としては、
かなりアブナイ部類。

「一歩間違えば」の世界だ。

とにかく西村氏は人生のある時、
藤沢清造なる作家に一瞬にして囚われたのだ。

思うに、
死人に惚れるというのは、
究極の片思いであろう。

きっとこの出会いがなければ、
今の西村賢太は存在せず、
アル中か何かで野たれ死んでいたかもしれないな。

突飛な内容に比べ文章は、
意外なほど端正で読みやすかった。

ゴッホの性格はずいぶん歪であったようだが、
残した作品は現代人の心を射抜く。

作品と作者は切り離して考えられないのだけれど、
とっても嫌な人間であっても、
生み出す作品が珠玉であるということは、
実際にあるということの不思議を、
少し考えた。

同じ時代にこの日本に生きて、
「KAGEROU」を書く人がいて、
「墓前生活」を書く人もいる。

●連合赤軍の永田洋子死刑囚が病死。大抵の若い人にとっては「誰?」だろう。。。

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