アインシュタインの伝記本が、
その日本語訳のあまりのひどさから回収騒ぎになり、
ネットや新聞で話題になっている。
初版5000部のその「とんでも本」にプレミアがつき、
定価の10倍で取り引きされているのだとか。
「これらのすごいブタが、あなたの精神に触れるのに最終的に成功したと立証します」
「堂々とした風采となだめている単語の両方で」
これはどう考えても自動翻訳そのまま。
出版史上に残る汚点だ。
こうなった経緯がまた不可解だ。
上下巻からなる伝記の中で、
とんでも翻訳は下巻の13章のみ。
ほかの章にこれほど酷い部分はないという。
一体どんな経緯でこんな事が起きたのか。
出版者がこういう騒ぎになること織り込んだ上での、
「宣伝活動」に利用したのではないかと、
うがった見方をしたくなるほど杜撰だ。
一冊の本の問題は、
ひいては「活字文化」への信頼を揺るがす。
先日も日経新聞に、
発売中の宝くじの偽当せん番号が掲載されるという、
前代未聞の珍事があった。
放送と通信の融合といわれて久しい。
電子出版もじわじわと日常に浸透しつつある。
執筆や編集や校閲など、
印刷されるまでのすべての作業がパソコンの中で行われるようになり、
紙媒体に対する緊張感、
つまり一度流布されたものは取り消せないという、
大原則が希薄になっているのではないか。
そもそも、
これら出版に不可欠な段取りを、
まともに踏んでいたのかも怪しい。
話題づくりには成功した。
適当に回収して重版から直せばいい。
そんな風に出版者が考えているとしたら、
そら恐ろしい話だ。
アインシュタイン博士も草葉の陰で泣いているに違いない。
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