「十三人の刺客」(工藤栄一監督)が公開されたのは、
昭和38年12月というから、
ぼくが生まれる前月だ。
とんでもない暴君が明石藩にいて、
どうにかしたいのであるが、
生憎将軍の腹違いの兄弟で、
うかつに手出しできない。
そこで老中(若き丹波哲郎)が、
目付(片岡千恵蔵)に暗殺の密命を下す。
参勤交代の帰途につく一向を待ち伏せる十三人が、
53人を相手に大立ち回りを演じる。
そのリアルなチャンバラシーンは、
この作品の最大の見どころなのだが、
ぼくはむしろそこに至るまでの「静」の場面がよかった。
様式美っていうのかなぁ、
「江戸時代かくありなん」みたいな豪華セット。
あの当時なら存分に残っていたであろう農村風景。
昔の時代劇って「世界のクロサワ」ぐらいしか知らなかったけど、
いやいやどうしてなかなか、
色々観てみようかと思った。
片岡千恵蔵が渋い。
和製ジャン・ギャバンって感じだ。
彼の台詞が印象に残った。
「生きようとすれば死に、死のうとすれば生きる」
戦後18年という当時にすれば、
それは戦争を生き抜いた者として実感のある言葉だっただろう。
映画では十三人のうちの一人、
西村晃演じる剣豪が、
まさしくこの言葉を体現していた。
しかし、
今のぼくには別の意味で心に響く。
保身だけの人生は退屈で、
後先考えぬ人生は輝く、
みたいな。
それにしてもサムライって、
「生きがい」より、
「死にがい」を求めていたんだなぁ。
●引き続きブロガーの障害は直っていない。こんなことでいいのか?