酒で心身を崩壊させ、
会社を8ケ月休職するはめに陥る2年ほど前、
ぼくは会社の東京本社に出向していて、
その時「小説の自由」に出会った。
作家保坂和志のこの本は、
その後のぼくの考え方を強烈に変えた。
これほど本から影響を受けたのは、
十代の時に読んだ開高健の「輝ける闇」以来。
まぁそれなりに本を読んできて50年弱、
ここまで影響を受けたのはこの2冊だけだ。
「小説の自由」からどんな影響を受けたのか、
強引に言うなら、
思考を丹念にトレースするような文章表現と、
「物事を簡単にわかろうとするな」というメッセージだったように思う。
そしてぼくは、
それまでの思考の檻から少し自由になれた。
あとは、
読んでみてくださいとしか言いようがない。
と、
ここまでは前フリで、
今日はその保坂氏の講演会(?)に行ってきた。
京都市役所そばの古本屋さんの2階、
畳敷きのスペースには、
若者を中心に100人は集まっていただろうか。
「ここのところずうっと考えている全部」と題して、
保坂氏が80分ほど話された後、
小休止をはさんで、
後半は質疑応答で進んだ。
「日本に革命を起こそう」みたいな、
ヤバい内容を密やかに期待していた思惑ははずれ、
「因果関係はフィクションだ」みたいな、
とてもまっとうな中身。
「合法的革命の可能性」いついて聞ける雰囲気はなかった。
でも、
「うわぁ、書いていることと同じこと言ってる」、
みたいな、
当たり前なことでも感動的だった。
考えるまでもなく、
彼は作家なのだから、
書くこと以上のことをしゃべる訳はない。
講演の方が書いたものより面白ければ、
その方が問題かもしれない。
でも、
ぼくとしてはそんなことより、
保坂氏本人に「会えた」ということが無上の喜び。
自分が何年も影響を受け続けている人に、
ようやく会えた喜びをわかってもらえるだろうか?
もうそれだけで十分なのに、
さらにもう一人、
会いたいと強く願っていた「管理人さん」とは会話までできた。
ぼくより一回り以上年上の管理人さんは、
写真や文章で推察するより、
はるかに魅力的。
若ぶるでもなく、
年寄り臭くもなく、
優しさとラジカルさと、
知性や分別を、
ほどよくブレンドしたような感じってわかるかな?
立ち話程度だったけど、
この直感をぼくは信じる。
人間の内面は、
想像以上に風貌に現れる。
ということは、
逆にぼくの内面も見抜かれたと思うけど、
いずれは管理人さんのように年をとりたいと思う。
満願成就な一日だった。
●甲子園口に帰ってきたのは0時を過ぎていた。ライブだったパティ様、間に合わなくてごめんなさい。