2011年11月19日土曜日

稀有

酒で心身を崩壊させ、
会社を8ケ月休職するはめに陥る2年ほど前、
ぼくは会社の東京本社に出向していて、
その時「小説の自由」に出会った。

作家保坂和志のこの本は、
その後のぼくの考え方を強烈に変えた。

これほど本から影響を受けたのは、
十代の時に読んだ開高健の「輝ける闇」以来。

まぁそれなりに本を読んできて50年弱、
ここまで影響を受けたのはこの2冊だけだ。

「小説の自由」からどんな影響を受けたのか、
強引に言うなら、
思考を丹念にトレースするような文章表現と、
「物事を簡単にわかろうとするな」というメッセージだったように思う。

そしてぼくは、
それまでの思考の檻から少し自由になれた。

あとは、
読んでみてくださいとしか言いようがない。

と、
ここまでは前フリで、
今日はその保坂氏の講演会(?)に行ってきた。

京都市役所そばの古本屋さんの2階、
畳敷きのスペースには、
若者を中心に100人は集まっていただろうか。

















「ここのところずうっと考えている全部」と題して、
保坂氏が80分ほど話された後、
小休止をはさんで、
後半は質疑応答で進んだ。

「日本に革命を起こそう」みたいな、
ヤバい内容を密やかに期待していた思惑ははずれ、
「因果関係はフィクションだ」みたいな、
とてもまっとうな中身。
「合法的革命の可能性」いついて聞ける雰囲気はなかった。

でも、
「うわぁ、書いていることと同じこと言ってる」、
みたいな、
当たり前なことでも感動的だった。

考えるまでもなく、
彼は作家なのだから、
書くこと以上のことをしゃべる訳はない。

講演の方が書いたものより面白ければ、
その方が問題かもしれない。

でも、
ぼくとしてはそんなことより、
保坂氏本人に「会えた」ということが無上の喜び。

自分が何年も影響を受け続けている人に、
ようやく会えた喜びをわかってもらえるだろうか?

もうそれだけで十分なのに、
さらにもう一人、
会いたいと強く願っていた「管理人さん」とは会話までできた。

ぼくより一回り以上年上の管理人さんは、
写真や文章で推察するより、
はるかに魅力的。

若ぶるでもなく、
年寄り臭くもなく、
優しさとラジカルさと、
知性や分別を、
ほどよくブレンドしたような感じってわかるかな?

立ち話程度だったけど、
この直感をぼくは信じる。

人間の内面は、
想像以上に風貌に現れる。

ということは、
逆にぼくの内面も見抜かれたと思うけど、
いずれは管理人さんのように年をとりたいと思う。

満願成就な一日だった。

●甲子園口に帰ってきたのは0時を過ぎていた。ライブだったパティ様、間に合わなくてごめんなさい。

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