その日は仕事が休みで、
セッションに参加するため、
夕方出かけた。
いつもより少し早目、
午後11時前に最寄駅に帰ってきたぼくは、
自転車置き場に向かう。
震災よりずっと前、
駅周辺に整備された時からずっと、
借りている場所だ。
もうほとんどの自転車は、
主と共に家路につき、
がらんとした駐輪場。
考えてみたがらんとしすぎていて、
ぼくの自転車までがなくなっていた。
「!」
声を上げることはなかったけど、
一瞬言葉もなかった。
あるべき場所にあるべき物がない。
座ろうとしたら椅子がなかったみたいな感じ。
あとは自転車こいで帰宅して、
風呂に入ってブログ書いてという、
頭の中の道筋がフッとかき消された。
我に返って考えてみた。
間違って別の場所に置いた?
いいや、
いつもの左右の自転車の間に差し込むように止めた。
ほんの数時間前のことだ。
その感触は今もある。
カギをかけ忘れた?
この左手にある。
ということは。
盗まれた。
ここまで認識するのに、
数秒ぐらいはかかった。
初めての経験だったけど、
落胆も怒りも別になかった。
係員も当然いない。
ただ携帯で母に連絡し、
「自転車盗られた。本当に」
とだけ伝え、
歩いて帰った。
防犯登録はしてある。
そのうちどこかで見つかるだろう。
そう楽観的に考えていた。
母の方が「えらいこっちゃ」という風であった。
ぼくは次の自転車を買うのはしばらく見合わせ、
通勤にはバスを使うことにした。
暑かったけど、
買ったら途端に見つかりそうな、
そんな間の悪さが自分にあることを、
ぼくは知っている。
母はせっせと自転車屋やら、
自転車置き場の係員に報告し、
最寄の交番に届を出した。
ぼくはそんな母を、
警察が一生懸命探してくれる訳ないじゃないかと、
冷ややかに、
でも黙って見ていた。
だから撤去自転車置き場からの通知を見たとき、
やっぱりこういう形で出てくるんだよなと、
妙に納得し、
つくづく新しい自転車を買わなくてよかったと、
10日間ほどの辛抱が報われた気がしていた。
だから1800円を出し惜しんだわけじゃなかった。
ただちょっと納得がいかなかっただけだ。
30日の夕方、
名神高速の下にある撤去自転車保管場所から、
市役所に電話をかけたぼくは、
そういう心境だった。。。
●この項続く●三宮のクレオールで、赤松真理さんのライブ。ギター&バイオリンとボーカルで活動しているバンドで、ジャズスタンダードとオリジナルの構成。初めての店だったけど、バーというよりミニホールという感じで、とっても上品。その上品さに赤松さんらの演奏がまたピッタリで、本当に心が洗われるようだった。一回洗ったぐらいじゃ、この汚れ、どうにもならないんだけど。
0 件のコメント:
コメントを投稿