なにはともあれ、
自転車が戻ってきたので、
盗難届を解除しないといけない。
自分の自転車に乗っていて、
あらぬ疑いをかけられたら、
気分悪いし。
ということで、
届け出た最寄の交番に行った。
セッションの帰りだったから、
日付は間もなく変わろうとしていた。
交番は無人で、
スチール机の上には電話機と連絡先。
用があるならここへということだ。
ぼくはちょっとためらった後、
かけてみた。
要件を面倒臭そうに聞いた、
電話の先の警官は、
近くを巡回中の警官を戻らせると言った。
10分ほど待ったけど、
誰も戻ってこないので、
備え付けのメモに「また来ます」と書き残し、
さぁ帰ろうとした時に、
パタパタパタとカブに乗った警官が帰ってきた。
いよいよ遅くなったし、
トイレにも行きたい。
さっさと済ませて帰ろうと、
椅子に座っていると、
さきほどの警官が中に入ってきて、
ヘルメットを脱いだ。
とっても小柄で、
分厚いレンズのメガネをかけたその婦警さんは、
いかにも警察学校をこのあいだ出たって感じ。
制服から警防、
無線機に防弾チョッキ、
身に付けているすべてが、
当たり前だが本物で、
それらを小さい体に取り付けられた婦警さんは、
現実感がなく、
これはコスプレ?って勘違いしそうだ。
盗難届解除届を作成しようとするのだが、
本署と電話でやりとりする様子が、
またたどたどしくて、
きっと無線の向こうの警官も、
さっきのような面倒臭そうな声のおっさんで、
このスズメのようにはかなげな府警さんに、
いろいろ「指導」している様子だ。
「発見場所の住所ですか?」
「あ、調べてなかった」
「かけなおします、あっそうですか」
受話器片手に住宅地図をめくり始める府警さん。
「久寿川って西宮ですかぁ」
大丈夫なんだろうかこの人。
早くしてくれ。
トイレの我慢が限界だ。
伝えようにも彼女は受話器を持って、
住宅地図をああでもない、
こうでもないとめくっている。
ぼくは住宅地図を渡すよう促し、
自転車返還所を必死で探してあげた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
だから早く電話を切ってくれ。
「すいません、トイレお借りできますか」
ダメ元で言ったら、
「いいですよ」って本当か。
ぼくは交番内のトイレに駆け込んで用を足し、
ドアを開けると、
婦警さんが警戒して立っていた。
この状況で、
刃物持った少年が、
「おやじ殺しました」とか言って来たら、
どうなるんだろう。
そして、
そいつが襲ってきたら、
ぼくが婦警さんを守らねばならないのかな。
いや案外、
この婦警さん、
シバトラみたいに、
めっちゃ強かったりして。
すっきりしたぼくは、
先ほどまでの焦りも消え、
スズメの婦警さんとの時間を、
楽しんでいた。
化粧っ気はない。
真っ黒短髪。
爪も短く切って、
腕にはくたびれたGショック。
そうかぁ時計は私物なのか。
ようやく書類を作り終えて帰る時、
頑張ってくださいって言おうとしたけど、
やっぱりやめて、
「ありがとうございました」と一礼して、
深夜の交番を後にした。
●武庫之荘「Mクアトロ」セッション。8時過ぎに行ったのに、客がいない。五輪が始まってから、客足が悪いという。歌い放題と言っても、そんなに楽譜持ってきてないし。そうこうしていたら少しずついつもの顔ぶれがそろいだして、最後はそこそこにぎやかになった●内柴の「金」。取れる時はこういうもんなんだと思う。
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