2008年8月11日月曜日

交番

なにはともあれ、
自転車が戻ってきたので、
盗難届を解除しないといけない。

自分の自転車に乗っていて、
あらぬ疑いをかけられたら、
気分悪いし。

ということで、
届け出た最寄の交番に行った。
セッションの帰りだったから、
日付は間もなく変わろうとしていた。

交番は無人で、
スチール机の上には電話機と連絡先。
用があるならここへということだ。

ぼくはちょっとためらった後、
かけてみた。
要件を面倒臭そうに聞いた、
電話の先の警官は、
近くを巡回中の警官を戻らせると言った。

10分ほど待ったけど、
誰も戻ってこないので、
備え付けのメモに「また来ます」と書き残し、
さぁ帰ろうとした時に、
パタパタパタとカブに乗った警官が帰ってきた。

いよいよ遅くなったし、
トイレにも行きたい。
さっさと済ませて帰ろうと、
椅子に座っていると、
さきほどの警官が中に入ってきて、
ヘルメットを脱いだ。

とっても小柄で、
分厚いレンズのメガネをかけたその婦警さんは、
いかにも警察学校をこのあいだ出たって感じ。

制服から警防、
無線機に防弾チョッキ、
身に付けているすべてが、
当たり前だが本物で、
それらを小さい体に取り付けられた婦警さんは、
現実感がなく、
これはコスプレ?って勘違いしそうだ。

盗難届解除届を作成しようとするのだが、
本署と電話でやりとりする様子が、
またたどたどしくて、
きっと無線の向こうの警官も、
さっきのような面倒臭そうな声のおっさんで、
このスズメのようにはかなげな府警さんに、
いろいろ「指導」している様子だ。

「発見場所の住所ですか?」
「あ、調べてなかった」
「かけなおします、あっそうですか」

受話器片手に住宅地図をめくり始める府警さん。

「久寿川って西宮ですかぁ」

大丈夫なんだろうかこの人。

早くしてくれ。
トイレの我慢が限界だ。

伝えようにも彼女は受話器を持って、
住宅地図をああでもない、
こうでもないとめくっている。

ぼくは住宅地図を渡すよう促し、
自転車返還所を必死で探してあげた。

「ありがとうございます」
「どういたしまして」

だから早く電話を切ってくれ。

「すいません、トイレお借りできますか」

ダメ元で言ったら、
「いいですよ」って本当か。

ぼくは交番内のトイレに駆け込んで用を足し、
ドアを開けると、
婦警さんが警戒して立っていた。

この状況で、
刃物持った少年が、
「おやじ殺しました」とか言って来たら、
どうなるんだろう。

そして、
そいつが襲ってきたら、
ぼくが婦警さんを守らねばならないのかな。
いや案外、
この婦警さん、
シバトラみたいに、
めっちゃ強かったりして。

すっきりしたぼくは、
先ほどまでの焦りも消え、
スズメの婦警さんとの時間を、
楽しんでいた。

化粧っ気はない。
真っ黒短髪。
爪も短く切って、
腕にはくたびれたGショック。

そうかぁ時計は私物なのか。
ようやく書類を作り終えて帰る時、
頑張ってくださいって言おうとしたけど、
やっぱりやめて、
「ありがとうございました」と一礼して、
深夜の交番を後にした。


●武庫之荘「Mクアトロ」セッション。8時過ぎに行ったのに、客がいない。五輪が始まってから、客足が悪いという。歌い放題と言っても、そんなに楽譜持ってきてないし。そうこうしていたら少しずついつもの顔ぶれがそろいだして、最後はそこそこにぎやかになった●内柴の「金」。取れる時はこういうもんなんだと思う。

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