2009年9月11日金曜日

禁断

ヒース・レジャーが28歳で急逝した時、
ぼくは彼のことを知らず、
その後公開された「ダーク・ナイト」のジョーカー役で、
強烈な演技に打たれ、
「惜しい俳優を亡くした」ということを実感した。

と同時に、
どうして彼がジョーカー役に抜擢されたのか不思議で、
「ブロークバック・マウンテン」(アン・リー監督)をDVDで観た。

で再び驚かされた。

そこには、
悪の化身で饒舌なあのジョーカーとは似ても似つかぬ、
寡黙で不器用なカウボーイ役の彼がいた。
それもゲイの。


1960年代の米といえば、
もちろん黒人差別は存在したわけだが、
ゲイやレズに対する偏見は、
ある意味黒人に対する以上に強かったのではなかろうか。

映画に登場する二人のカウボーイは、
20年間にわたり関係を続けながらも、
女性と結婚し子どもももうけ、
一見人並みの家庭を築く。

二人の逢瀬は年に数回。
それでも、
いやそれが故に二人の愛は衰えることなく、
それは片方の悲劇的な死まで続く。


大自然をバックにした二人の演技が素晴らしい。
どっちつかずの中途半端な状態を続けた果てに、
自分たちや周囲を不幸に陥れ、
結局、
取り戻すことのできない年月を悔やむ。

そんな悲劇的な歳月が、
やや駆け足に、
それでも淡々と描写されていく。


それにしても、
ゲイの寡黙な青年とジョーカー。
これほど振幅の激しい役を演じきったヒース・レジャーとは、
いったいどのような俳優だったのだろうか。

ダーク・ナイト完成直前、
公私ともにつかれ切った彼は、
睡眠薬など薬物に頼るようになり、
結局それがもとで死んでしまった。


そこまでして、
あのジョーカーを作り上げたのか。

もう一度「ダーク・ナイト」を観たくなった。

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