2010年2月22日月曜日

自失

女子フィギュアが間もなくということで、
Nスペで浅田真央の特集をやっていた。

フリーで滑る「鐘」という演目がいかに高難度であるか。

番組の眼目はそこにあるようだった。


「ジャンプと表現の両立」という難題に挑む浅田は立派だ。

でも、
やっぱりこの演目は今の彼女には荷が重すぎると思う。


昨年のロシアグランプリでひどい演技をしたあと、
タチアナ・タラソワコーチは浅田に聞いたそうだ。

「本当に鐘のままでいいの?」

それに浅田はこう答えたという。

「変えたいとは思わない」


その心境について語る浅田の言葉が印象的だ。

「まだパーフェクトに滑ってないですし、今まで積み重ねてきたものを、そんなにすぐには出来ないからとか、試合で完璧にやってないのに、変えるのはもったいないと思いましたし、それは無駄になると思いましたし、あとやっぱりタチアナ先生に申し訳ないなっていう気持ちでした」


最後の「タチアナ先生に申し訳ない」という部分が大問題だ。


荒川静香の例を思いだす。

彼女は長野五輪で惨敗し、
二度と五輪には出ないと誓ったという。

周囲からあれこれ言われ、
中には正反対のアドバイスもあり、
完全に自分を見失った苦い経験したからだ。

だからトリノ五輪に選ばれた時、
2度と同じ過ちは繰り返さないと誓った。

周囲の意見ではなく自分の考えで行動すると。

彼女もそれまでタラソワに師事していたのだが、
モロゾフコーチの意見も聞きたいと思い、
タラソワに相談した。

この時タラソワは「彼をとるか私をとるかどっちかにしなさい」と迫ったという。

荒川はここで決断する。
彼女はタラソワを蹴ってモロゾフにコーチを変えた。


それは彼女が「金」を取った今だから言える結果論かもしれないが、
浅田の言葉を聞いていると、
どうしても彼女自身、
「鐘」という演目を好きではないように思えてならない。

スポーツ選手は一般にプラス思考だし、
そのようにメンタルトレーニングも積んでいる。

だから、
取材を受ければ、
「このリンクは滑りやすい」とか、
「調子はいい」とか、
「金が取りたい」とか、
発言は威勢がよく一見頼もしげに映る。

それでも、
今の浅田は自分を見失っているように見える。


とにかくターゲットはキム・ヨナしかいない。
彼女と互角に戦うためには、
フリーの「鐘」よりまず、
SPで大きく離されないことが絶対条件だろう。

もしここで大差がつくようなら、
「鐘」での挽回はありえないように思う。

●浅田のビデオを見ながらタラソワが「あなたは一番強い人間よ。一番強い人間よ」と繰り返し、涙まで流していたのには驚いたが。

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