2010年2月27日土曜日

銀盤

キム・ヨナの演技中、
浅田真央は浜崎あゆみの曲を聞いていたそうだが、
イヤホン越しに聞こえてきた大歓声で、
ヨナが素晴らしい演技をしたことは分かったそうだ。

その時点で、
自分の金はないと悟っただろう。
浅田はただ自分が完璧な演技をすることだけに集中したはずだ。

しかしそれはかなわなかった。

だから演技の後の抑え切れなかった涙は、
金を逃したことでも、
ヨナに負けたことでもなく、
自分に勝てなかったことへの悔し涙だっただろう。


19歳同士。
「宿命のライバル」とも評される二人のアスリートの、
どこに差があったのかと考えると、
大きく言えば「人生観」みたいなものではないだろうか。

五輪を、
自分の人生の一つの過程として考えられるヨナと、
それまでの人生の集大成と捉えてしまう浅田。

言いかえれば、
浅田は東大に入ることが目標の人で、
ヨナは優れた研究者になるために東大を目指す人みたいな。


大舞台に向け考え得るあらゆる練習をし、
納得づくで銀盤の上に立ったはずの浅田だった。

3回転半を2回決め、
本来なら行け行け状態になれるはずだったのに、
後半、
エッジが氷に引っ掛かってしまったため、
3回転を諦めて1回転にした。

浅田が最も悔いていたのは、
その自分の弱さだろう。

最後の最後で、
自分を信じてやれなかった自分。


でも、
浅田は自分の弱さを知ったことで、
きっともっと強くなる。

4年後にもう一度「鐘」を見てみたい。

●鈴木明子、安藤美姫。よかったよかったという感じ。

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