2010年4月15日木曜日

捨石

たまたま入った本屋で、
パッと目についた本が、
意外に面白いことが多い。

あれこれ考えないということは、
つまり「背伸び」していないということだろう。

昨日難波のBook1で買った、
「村上春樹の秘密」(柘植光彦著、アスキー新書)もそのひとつ。

村上春樹のこれまでの歩みが、
コンパクトにまとめられていて、
しかも、
作品を横断的に分析する、
その切り口が新鮮だった。


「1Q84」のBOOK3が16日午前0時に発売されるという。

きっと行列ができて、
社会現象になって、
新聞ダネになるだろう。


で、
「村上春樹の秘密」についてだけど、
同書で紹介されている、
「お伽噺の31の機能」というのは、
ぼくは全く知らなかった。

ロシアのウラジミール・プロップという学者が提唱した説で、
昔話には特定のパターンがあるというもの。

ウィキから引用すると、

「留守もしくは閉じ込め」
「禁止」
「違反」
「捜索」
「密告」
「謀略」
「黙認」
「加害または欠如」
「調停」
「主人公の同意」
「主人公の出発」
「魔法の授与者に試される主人公(贈与者の第一機能)」
「主人公の反応」
「魔法の手段の提供・獲得」
「主人公の移動」
「主人公と敵対者の闘争もしくは難題」
「狙われる主人公」
「敵対者に対する勝利」
「発端の不幸または欠如の解消」
「主人公の帰還」
「追跡される主人公」
「主人公の救出」
「主人公が身分を隠して家に戻る」
「偽主人公の主張」
「主人公に難題が出される」
「難題の実行」
「主人公が再確認される」
「偽主人公または敵対者の仮面がはがれる」
「主人公の新たな変身」
「敵対者の処罰」
「結婚(もしくは即位のみ)」

多くの昔話(少なくとも魔法がらみの)は、
こういう展開をたどる、
ということらしい。

ちょっと調べてみると、
スター・ウォーズから、
ドラクエ、
宮崎駿作品、
そして村上春樹作品にも、
このパターンが読み取れるという。

およそ人間が考える物語の展開、
それも面白いものとなると、
大なり小なり似てくるもんだとも思えるけど。

そう、
重要なのは、
人間の行動(思考)パターンは、
結構限られているのだということ。

みんな千差万別の環境にあって、
運不運に左右もされながら、
唯一無二の人生を送っているように思いながら、
その実、
ほとんどのものは、
お決まりのパターンに落ち着くっていうことはよくある。

オレとあんたは違うんだって、
そう思っていても、
とどのつまり同じですよと、
そう嫌というほど思い知らされた今となっては、
とってもよく分かる。

昨日書いた「虐殺器官」も、
人間の思考パターンを悪用するヤツが出てきたなぁ。


かなり独創的と思われた作品でも、
そういう作品が生まれるパターンは、
以前の事例を踏襲しているだけってこともあるかも。

そういう意味では、
人間が人間である限り、
真の独創などめったにないのかもしれない。

それを息苦しく考えるか、
どうせ型通りにしか生きられないなら、
思う存分好き勝手にやってやろうと考えるかは、
その人次第だろう。


そういえば、
今日のNHK「歴史秘話ヒストリア」で、
吉田松陰を取り上げていた。

前にも書いたけど、
この人、
学校の歴史で習った印象と違い過ぎ。

笑えるほど無茶苦茶な行動を繰り返し、
弟子が止めるのも聞かず、
ついには死罪になってしまう。

型破りというか、
時代の捨石になるのを厭わない人。


たとえ捨石にでも、
なれれば素晴らしい。

●著者の柘植氏は、もう70歳を過ぎているのに、随分若々しい文章を書くので驚いた●寄り道読書ばかりで「ピストルズ」が進まない。ちなみに「1Q84」、今回はアマゾンでちゃんと予約してある。あぁ。

  

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