病院で患者に「様」を付けるようになったのは、
亡き親父がガン治療をしていたころだったから、
かれこれ五年ほど前のことになる。
もちろんぼく個人の経験だから、
ほかの病院ではもっと昔からだったかもしれないけど。
その時覚えた強烈な違和感は、
今でも変わらない。
なぜか。
結局この問いの答えは、
「病院にとって患者は客なのか」という一点に尽きると思う。
病院は患者に治療というサービスを施し、
その対価として患者は金を払う。
そう考えれば確かに病院も「商売」であろうが、
それならば、
学費を払っている生徒に学校は「様」を付けねばなかろう。
役所も住民は「様」扱いとなる。
しかしそうならないのは、
金のやり取りはあっても、
医療や公共業務は商売ではない、
そういう思いがあるからこそだ。
医は商いにあらず。
仁術なり。
患者に「様」を付ける病院は、
仁術ではなく商売をしていると、
意思表示しているわけだ。
セカンドオピニオンとか、
医療過誤訴訟とか、
患者と医療の関係も確かに変わってきているけど、
やっぱり医は仁術であってほしい。