「ファッションが教えてくれること」という映画を借りてみた。
VOGUEのアメリカ版の名物編集長アナ・ウィンターのドキュメント。
「プラダを着た悪魔」でメリルストリープが演じた、
「ランウェイ」編集長のモデルだそうだ。
2007年の9月号特大号の編集過程を地道に追っている。
部下の苦労など意に介さず、
自分の感性(我がまま?)でバッタバッタと企画を葬り去る、
そんな冷酷無比な鬼編集長ぶりを期待していたけれど、
そういう意味では肩すかしだった。
むしろ、
彼女と同期で入社し、
今は彼女の下で編集者として働くグレイスの働きぶりに、
より多くの時間をさいている。
編集長と編集者というのは、
全く違う職業だと思う。
編集者は自分が作りたい紙面を全力で作る。
編集長はそれらの仕事をパッケージングして、
「売れる」雑誌に仕上げる。
編集者は自分の企画を少しでも多く採用されたい。
もちろん自分の仕事に自信もある。
グレイスの作り出す紙面は芸術だ。
一方編集長は最終的に「売れるか否か」を基に、
企画の採否を判断する。
二人の指向性は異なっているから、
衝突するのは当たり前だ。
何よりもファッションは生ものだ。
締め切り間際までバタバタするのは、
日一日と流行が動くファッションの、
最新の姿を最上の形で捉えたいという、
至極最もな感覚からくるのだろう。
編集者が用意した最上の食材を、
最後の最後まで手間を惜しまず、
最高の料理に仕上げる。
で、
ここからが肝心なのだけれど、
編集作業が終わった瞬間、
彼女らにとって9月号はもはや「過去」ということだ。
出来上がった雑誌を胸に、
感慨に浸っている暇はない。
さっと忘れて、
次の仕事に取りかかる。
その潔さがカッコいいと思う。
●業務連絡。元町には木曜日に参上いたします。