映画「おくりびと」は依然見ていないのだが、
代わりに原作というべき「納棺夫日記」(青木新門著、文春文庫)を読んだ。
とてもいい。
仏教的には「生」と「死」は本来不可分の「生死」であるのに、
現代社会は「生」の側に過剰な重みを置いて、
その反動として「死」を忌み嫌うようになった。
ひょんなことから死体を納棺する仕事についた著者は、
その体験を通して「生死」について考える。
そのプロセスがてらいなく綴られ、
時にはっとさせられた。
「いつの時代になっても、生に立脚し、生に視点を置いたまま適当に死を想像して、さもありなんといった思想などを構築したりするものが後を絶たない。特に、人間の知を頑なに信じ、現場の知には疎く、それでいて感性は生に執着したままの知識人に多い」
死の視点からを生を想像する。
そうだ。
「メメント・モリ」(死を想え)だ。
ちょうど藤原新也の写真集「メメント・モリ」(三五館)を並行して読んで(見て)いて、
これも何かの縁かと思う。
1990年に発行された著者のインド旅行の記録だ。
ここには生死が渾然一体となった世界がある。
●「おくりびと」には縁がないのだろう●何気につけたNHK芸術劇場「平成のぞきからくり・破れ傘長庵」が抜群。人形劇と俳優のコラボ?そして同じ舞台上で高橋悠治がピアノを弾いている。何とも異色な取り合わせで、引きずり込まれた。
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