朝7時半までかかって「1Q84」を読み終えた。
1、2巻合わせて約1000ページ。
これだけの分量を、
一気に読ませる圧倒的な物語力は、
「さすが村上春樹」だと素直に思う。
脳科学や生命科学、
宗教や音楽、
意識や時間、
善悪や罪と罰、
相関関係と因果関係、
そして、
通奏低音として流れる「愛」
ノーベル賞でもとろうかという世界的作家が、
7年もの歳月をかけて世に問うたのだ。
現代人が抱えるあらゆる問題点が盛り込まれた、
記念碑的作品であることは間違いない。
にもかかわらず、
大きく2つの点で腑に落ちない部分がある。
ひとつは、
物語の中心的存在として描かれるカルト教団が、
オウム真理教をベースにしていることが明白であるにもかかわらず、
「リーダー」と称される登場人物、
つまり麻原彰晃をモデルにした人物の描き方。
重い時計を念力(だか何だかしらないが)で持ち上げてみせ、
初対面の人物の過去をスラスラ当ててしまう。
そういう特別な力を持った人物として書かれている。
なぜこの点が書評あるいは報道で問題にされないのか、
不思議なくらい「好意的」なのだ。
村上春樹には過去に、
サリン事件の被害者から聞き取りした著作があるが、
あの被害者たちはこの作品をどう捉えるのだろう。
そしてもうひとつは、
圧倒的な物語力にもかかわらず、
かつての作品が持っていたような「魔法」の力がない、
あるいは弱く感じられる点だ。
作風が変わった、
あるいは、
ぼくの文学的味覚が変わったということなのかもしれないが、
物語の牽引力は強いのだけど、
彼独特の文章の「風味」が薄い。
彼以外には考えつかないのにも関わらず、
絶妙にこちらに伝わる彼独特の比喩、
それ自体が非常に魅力的だった言い回しが、
この作品では逆にマイナス要素にさえ覚える。
まるで編集者に言われて渋々つけ加えたように(そんなことはあるはずもないが)。
提示されている世界観や物語の構成は、
十二分に「ハルキ的」なものだけど、
以前の作品とは明らかに一線を画している。
それをどう受け止めるかは、
こちら次第ということか。
「説明しなくてはわからないということは、説明されてもわからないということだ」
作品の後半部分で繰り返されるフレーズだ。
そういうことだ、
と思う。
●これはどう考えても3巻以降に続く。ワイドショーで知った母に「あれ、もう読んだんか」と聞かれた。何なら貸そうか?●ヤナーチェック「シンフォニエッタ」。全く知らない曲だけど、とりあえずAmazonでCDを注文してしまった。あれだけ書かれたら、そりゃ聞きたくなるよ。
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