子どものころに、
母の三面鏡で遊んでいた時のことだ。
鏡をちょうど正三角形のように閉じて、
隙間から頭を入れるのが好きだった。
その景色は、
自分の顔がズラーっと延々並んで、
まるで万華鏡の中にいるような、
不思議な感覚で、
ぼくはしばらくその遊びに夢中になった。
「単純な脳、複雑な『私』」によると、
僕はその瞬間、
無限∞を垣間見たことになる。
果てしなく、
底のない世界。
それは魅惑的ではあったが、
体の芯からぞくっとくるような、
恐怖とも結びついている。
ある物の中に同じ物がある、
そういう「入れ子構造」を、
「リカージョン」(再帰)というそうだ。
この本によると、
再帰的意識を持つのは人間だけで、
それは、
言語によって初めて可能になった。
だが、
それは同時に、
人間が無限と矛盾を抱え込むことだった。
自分を意識する。
(自分を意識する自分)を意識する自分。
(自分を意識する自分を意識する自分)を意識する自分。
(自分を意識する自分を意識する自分を意識する自分)を意識する自分。。。
いくら追いかけても、
絶対に追いつけない。
その不思議な感触は、
三面鏡に頭を突っ込んだあの時と、
とてもよく似ている。
●プロレスラー三沢光晴が、バックドロップで死んだ。壮絶すぎる46歳の最期。
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