2009年7月5日日曜日

捨身

「プロレスは真剣勝負だ」
などと、
今更言う人はいまい。

そもそも「興業」、
つまり「見世物」だ。
そんなことは皆知っている。

鍛え上げられた体、
磨き抜かれた技があって初めて成り立つ「見世物」だ。

また一方で、
還暦を過ぎたジャイアント馬場が現役でいられたように、
存在そのものが「伝説」と化す場合もある。

そういう雑多な要素も全部飲み込んで、
プロレスは成り立っているし、
であるからこそ、
ファンは自分の雑多な人生を投影し、
カタルシスを覚えるのである。



「レスラー」(ダーレン・アロノフスキー監督)を観た。

初老のプロレスラーを、
ミッキー・ロークが演じ、
昨年のアカデミー主演男優賞に輝いた作品だ。

いくつかの映画評も好意的で、
是非とも見たかっただが、
正直思ったほどではなかった。

もちろん、
ロークの文字通り「捨て身」の演技は、
彼の昔を知る者として、
すさまじい気迫を感じざるを得ない。

ドサ回りを繰り返し、
体がズタズタになってもリングに上がり続けるレスラーの、
リアルな世界が描かれていたとも思う。



残念だったのは、
ストーリーがありきたり、
つまり、
完全に予測の範囲内だったということに尽きる。

この作品が言いたいことはとてもよく分かる。
だが、
観客に「よく分かる」と思われた時点で、
映画としては失敗とは言えまいか。

「分かる」を超えた何かを、
直接胸に伝える魔法が備わってなければ、
映画は成り立たない。

リアルさだけを追うなら、
ドキュメンタリーでいい。



兎にも角にも、
ロークがすべて。

彼抜きでは成立しない映画だ。


●リングで死んだ三沢光晴を思った●相撲も「興業」だ。本来プロレスと似たようなもの。そう考えれば、八百長だなんだと言うこと自体が馬鹿らしくなってくる●ペンギンさん不在●男子高校生が駅で同級生を刺殺。

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