2009年7月31日金曜日

過去

夏本番のはずなのに梅雨すら明けず、
かといってこの時間の戸外は、
まるで秋のようにさわやかだ。

またしても変な夏だ。

だけど、
じゃあ一体いつごろの夏が「まともな夏だったのか」と問われれば、
答えに窮してしまう。

「まともな夏」など人それぞれで、
大方は子どものころの一時期の、
ほんの数年の記憶が「まとも」だと思い込んでいるだけではないか。

本当は、
夏の様相など毎年違うのだ。



京都で地球温暖化会議が開かれた1997年12月当時、
環境問題が今ほど大騒ぎになるとは夢想だにしなかった。
「エコは商売にならぬ」というのが、
世界の大方の認識だったと思う。

同じ月、
トヨタがプリウスを発表した。
世界初の量産型ハイブリット車だ。

あれから12年がたち、
そのプリウスの3代目がバカ売れしているらしい。
毎年「変な夏」を繰り返している間に、
世界の潮流は間違いなく「エコ」になり、
何でもかんでも「エコ」に結び付けようと、
企業やマスコミはみな躍起になっている。



「胡蝶の夢」(フランシス・フォード・コッポラ監督)をDVDで。
TUTAYAのオンライン会員にならなければ、
決して見ることもなかっただろう。

自分が蝶になる夢を見たのか、
今の自分が蝶の夢なのか。

荘子の故事からとった題名だが、
原題は「YOUTH WITHOUT YOUTH」(若さなき若さ)。
どう解釈するのかわからないが、
映画を見る限り、
老人の記憶にある若き日の自分ということか。



人にとって「過去」は記憶とイコールで、
今見る昔の映像は、
「過去」そのものではない。

あくまで「今見た過去の映像」だ。

プリウスの成功譚がしばしば語られるが、
歴史は往々にして、
世界の記憶の中にある世界、
「YOUTH WITHOUT YOUTH」だとも言える。

だから過去だけをよすがに、
未来を生きようとすれば、
世界はいつかまた間違える。

その過去は、
世界の記憶に過ぎない。
あらゆる記憶は、
常に変質している。

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