2009年7月29日水曜日

奉仕

芥川賞の受賞式で、
作家磯崎憲一郎氏はこう語った。

「小説、芸術という大きな肯定的な力に奉仕する存在でありたい」

「奉仕」という言葉の使い方が、
とても新鮮だった。



「奉仕」には「無償の労働」という意味があるけど、
それは単に、
プロではない、
あるいはアマチュアであるということだけではないだろう。

また、
奉仕という言葉には、
宗教的背景がたぶんに含まれていると思うが、
磯崎氏は「小説に奉仕する」のであり、
決して「小説の神に奉仕する」のではない。

小説それ自体の、
可能性の拡大に寄与したいという感じかと思う。
ひいては、
小説を通じて読者たる人間に奉仕することでもある。



アマチュアと言えば、
映画「ボビー・ジョーンズ」で、
その語源がラテン語の「愛」であることを知った。

ボビー・ジョーンズは、
伝説のゴルファーとして有名であるが、
プロにはならなかったのだということは、
ちっとも知らなかった。

初のグランドスラムを達成した1930年、
彼は28歳で現役を引退し、
その後は弁護士業のかたわら、
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブを設計し、
現在の4大大会のひとつである、
マスターズ・トーナメントを創設した。

プロ化が加速するスポーツに、
奉仕という言葉は馴染まないかもしれないが、
彼などはまさしく、
ゴルフに奉仕した人と言えるだろう。

「球聖」と呼ばれる訳が、
やっとわかった。



そういえば、
先日の情熱大陸で、
ミャンマーの子供たちを無償で治療する医師を紹介していた。

凄い人が行きつく先は、
すべて同じなのだ。

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