2009年7月24日金曜日

地図

地図さえあれば、
どこにでも行ける自信はあるけど、
それは、
地図が「正しい」という条件付きだ。

最近のお洒落な店の地図は、
デザイン優先なのだろう、
東西と南北の縮尺が違ったり、
雑多な道路は省かれていたりして、
役立たずないことが多い。



先日、
堀江のライブハウスへ行った時も、
ネットの地図を見た時点で、
かなり怪しいとにらんでいた。

地下鉄の駅を出るともう夕暮れ。
下手に迷うより、
ここは早めに尋ねてみることにした。

とはいうものの、
そのあたりに詳しい人を見つけるのは、
案外難しい。

都会だと、
明らかにそこに住んでいる人でも、
周辺のことは意外に知らないものだし、
場合によっては思い違いをしていて、
かえって迷う羽目になることもある。

一番確かなのはもちろん交番だが、
ない場合は不動産屋を探す。
少なくとも周辺の詳しい住宅地図はあるからだ。



その時は交番も不動産屋も見当たらず、
通りすがりの若い女性に声をかけた。
いかにも事務員の制服のような格好をしていたし、
会社への届け物のような荷物を持っていたからだ。

彼女は、
ぼくがプリントアウトして持っていた地図を見ると、
少しの間考えていた。
お洒落な地図は、
すべてローマ字表記なのだ。

やがて彼女は幹線道路や地下鉄の駅、
数少ない目印の建物の位置関係を把握し、
店への大体の行き方を教えてくれた。

それだけ分かれば十分。
ある程度行って、
それでもまた聞けばいい。



「ありがとうございます」と言って、
目的の方向へ歩き出した時、
背後から彼女の声がした。


「またよろしくお願いします!」


仕事の口癖が出たのだろうが、
ぼくは余りに可笑しくて、
振り返って突っ込もうかと一瞬考えたが、
それは流石にやめた。

きっと彼女は凄く恥ずかしがっているだろうし、
ここは気づかぬ振りがよかろう。



それに、
またお世話になるかもしれないし。


●彼女の言う通りに行ったら、ちゃんとたどり着けた。

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