地図さえあれば、
どこにでも行ける自信はあるけど、
それは、
地図が「正しい」という条件付きだ。
最近のお洒落な店の地図は、
デザイン優先なのだろう、
東西と南北の縮尺が違ったり、
雑多な道路は省かれていたりして、
役立たずないことが多い。
先日、
堀江のライブハウスへ行った時も、
ネットの地図を見た時点で、
かなり怪しいとにらんでいた。
地下鉄の駅を出るともう夕暮れ。
下手に迷うより、
ここは早めに尋ねてみることにした。
とはいうものの、
そのあたりに詳しい人を見つけるのは、
案外難しい。
都会だと、
明らかにそこに住んでいる人でも、
周辺のことは意外に知らないものだし、
場合によっては思い違いをしていて、
かえって迷う羽目になることもある。
一番確かなのはもちろん交番だが、
ない場合は不動産屋を探す。
少なくとも周辺の詳しい住宅地図はあるからだ。
その時は交番も不動産屋も見当たらず、
通りすがりの若い女性に声をかけた。
いかにも事務員の制服のような格好をしていたし、
会社への届け物のような荷物を持っていたからだ。
彼女は、
ぼくがプリントアウトして持っていた地図を見ると、
少しの間考えていた。
お洒落な地図は、
すべてローマ字表記なのだ。
やがて彼女は幹線道路や地下鉄の駅、
数少ない目印の建物の位置関係を把握し、
店への大体の行き方を教えてくれた。
それだけ分かれば十分。
ある程度行って、
それでもまた聞けばいい。
「ありがとうございます」と言って、
目的の方向へ歩き出した時、
背後から彼女の声がした。
「またよろしくお願いします!」
仕事の口癖が出たのだろうが、
ぼくは余りに可笑しくて、
振り返って突っ込もうかと一瞬考えたが、
それは流石にやめた。
きっと彼女は凄く恥ずかしがっているだろうし、
ここは気づかぬ振りがよかろう。
それに、
またお世話になるかもしれないし。
●彼女の言う通りに行ったら、ちゃんとたどり着けた。
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