桐野夏生の「IN」を買おうかと思い、
紀伊国屋に入ったのだが、
雑誌売り場で文學界に目が止まった。
「1Q84」の書評に興味があったからなのだが、
買ってみると、
巻頭の松尾スズキ作「老人賭博」が抜群に面白かった。
邦画撮影現場のドタバタを、
ユーモラスに描いた作品で、
架空の登場人物に、
つい実在の役者をあてはめ(例えばベテラン俳優「小関」は大滝秀治)、
電車の中で思わず吹き出しそうになった。
相手役の女優は、
グラビアアイドルとして売り出し中の、
「いしかわ海」という設定で、
こちらも、
実在の女優が何人か頭に浮かんだ。
海は、
ひょんな成り行きで、
24歳の主人公「ボク」に、
自分は「偽善」に興味があると告白する。
B級アイドル仲間に、自分の不幸を語る人間が何人もいることに気づいた海は、彼女たちにインタビューをしてまわった。すると、過去、家族や恋人に虐待を受けている人間があまりにも多いことがわかった。なぜ人は人に暴力をふるうのか。それを知るため海は、歴史を独学で勉強したという。その結果、世の中の暴力の歴史は悪というより、それをふるうものの「独善」に基づいていると海は確信した。海自身、親に虐待を受けずっと性悪説で生きてきたので、その歴史にショックを受けた。性悪だからこそ自分は善を意識して生きなければと思ってきたのに、善そのものが、それほどにこの世に不幸をもたらしているなんて。それなら、せめて独善より偽善の方が遥かに扱いやすく罪がないという結論にいたったと海はいうのだ。いろんなことを考えて人は生きているのだなあ、というのが、地獄の労働と喧嘩三昧の日々の中、考えることを放棄してしまったボクの虚ろな感想だ。
独善より偽善の方が罪がない。
全然笑えるところではないのだが、
ある意味一番印象的だった。
とても笑える小説だけど、
本質は間違いなくここにある。
●著者はかつて「クワイエットルームへようこそ」で芥川賞候補になったが、本作は直木賞かもしれない●肝心の「1Q84」の書評は、まだ、どれも解析途中という感じで、手探り感がありあり●元町から堀江まで、よく移動した一日●そのせいだろう、年に数回しか会うことのない知人2人に、別々の場所で偶然出会った。うち一人のT君はこのブログを毎朝読んでくれているという。ありがとう●ペンギンさんに久しぶりにお目にかかれた●マイケル・ジャクソンの緊急特集をNHKで。1時間の大半は、PV流すだけで終わった。肩透かし。
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