うちの近所のショッピングセンターのある場所は、
昔、
野球場があって、
そこでは定期的に競輪も行われていた。
その頃には、
うちの町内会に競輪協会から、
「迷惑料」としていくばくかの金が配られていて、
それで町内会費は潤い、
町内会旅行などに充てられていた、
というのは母の述懐である。
迷惑施設は常に地元に金をばらまく。
競輪場しかり、
下水処理場しかり、
暴力団事務所しかり、
米軍基地しかり。
そして、
原発しかりである。
ぼくがかつて住んでいた福井県。
四季がはっきりとしていて、
日本海の幸に恵まれたかの地は、
本当によい所だった。
ただ、
原発があるという一点を除いて。
電力事業者は、
「絶対安全」という美辞麗句を表では掲げ、
その裏で地元には湯水のごとく金をばらまいていた。
「原発が絶対安全なら東京都に作ればいい」
そういう原発反対論が虚しいのは、
「絶対」などないことは皆知っているからで、
我々は迷惑施設を田舎に押しつけ、
電力という恩恵を受け取ってきた。
福島県や福井県などが、
原発を受け入れざるを得なかったのは、
ただただその地が貧しかったからだ。
欲に目がくらんだというのではなく、
たとえ危険な原発であっても、
それにすがらねば生きていけなかった、
そういう切実な現実があったのだ。
福島原発事故で、
周辺住民は強制的に立ち退かされ、
今後、
再び故郷に戻れるあてはない。
電力という果実だけを受け取ってきた身としては、
やはり、
人間は生きているだけで誰かに迷惑をかけているのだと、
再認識してこうべを垂れるしかない。
「放射線情報」というアプリがある。
日本国民はこれから、
天気予報を見るように放射線情報を気にしながら、
日々暮らしていくのだ。
それは一義的には東電や国の責任ではあるが、
結局は、
迷惑施設を貧しい町に押しつけ、
見て見ぬふりをしてきた、
ぼくら全員が払わねばならない代償なのだ。
●束の間の休息。「ザ・ファイター」を観た。たいして面白くなかった。さぁ、また怒涛の勤務だ。
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