2011年9月16日金曜日

部長

会社帰りのタクシー乗り場。

定刻に着くと、
「今日は○○部長と相乗り」ですと言われた。

げっ。

別に相乗りが嫌なのではなく、
見知らぬ人と乗り合わせた時の、
何ともいえぬ車内の白けたムードが苦手なのだ。

そして○○部長とは、
ぼくは顔を知っている程度で、
会話をしたことは一度もない。

しかも既にベンチに座ってぼくを待っているし。

「お待たせしました」

一応これでも社会人である。
間に会っていてもこれぐらいは言う。

すると○○部長、
開口一番、
「まだ歌ってるの?」

「!!!!!!!!!」

「ど、どうしてそんなことを御存じなんですか」

そう返すのがやっとだった。

一体この人は、
どんなルートでぼくのことを調べたのか?

うちの会社は社員の趣味までリサーチするのか!

様々な考えが頭をよぎる。

すると○○部長、
「随分前に▽▽で歌ってたじゃない。ぼくあのころよく通ってたんだよ」

「!!!!!!!!!」

そえはもう5年以上前、
ほんの遊び程度でジャズを歌い始めたころ、
ちょくちょく行っていた店だ。

そこで会っていたのだ。

その時も会話はしなかったはず。

いや、
ひょっとしたら酔ってベラベラ喋ったかもしれない。。。

それにしても、
以後会社でも一度として声をかけられることはなかったのだ。

ま、
いずれにしてもだ。

そんな形でぼくのことを覚えていてくれたとは。

もちろん、
その後のぼくの失敗も全部ご存じのはずで、
そりゃまぁ恐縮することしきり。

でも○○部長、
それからも話題を切らさず、
最後までさわやかに話して先に降りていった。

気を遣ったのはむしろ、
○○部長の方だったかもしれない。

一人になった車内で、
ぼくは「フゥ~」と、
背もたれに体重を預けた。

遺志

30日は親父の13回忌だ。 あーそんなになるのか、 と言うのが率直な感想。 親父が亡くなる直前、 僕は酒を辞めた。 復職して最初のボーナスが出た日、 入院していた病院に行って報告した。 もう親父はかなり弱っていて、 ほとんど喋れなかった。 でも...