一部で話題の「巨魁」(清武英利著、WAC)。
著者はジャイアンツの元GMで、
昨秋、
コーチ人事を巡るクーデター会見で、
あっさりクビになった人だ。
最近では、
朝日新聞が大々的に取り上げている、
ジャイアンツ選手の契約金問題の「ネタ元」として、
ナベツネ氏から「泥棒猫、ドブネズミ」と呼ばれたのが、
この人であることはもはや公然の秘密である。
タイトルの巨魁とは、
そのナベツネ氏の別称である。
まぁ何かと話題なので、
一応読んどくかと開いたら、
あまりに面白くて一気読みとなった。
著者が自分贔屓に書いちゃうのは致し方ないとして、
話半分としても、
清武氏がジャイアンツ改革に真剣だったことは、
否定できないだろう。
対してナベツネ氏はこの本の中では、
ジャイアンツを金儲けの道具としか見ておらず、
コーチや球団職員の名前はおろか、
二塁手とショートはどちらが一塁に近いかなんて、
野球のいろは以前のことも知らない御人だとなっている。
プロ野球球団の親会社のトップなんて、
そんなもんかもしれないけど、
ソフトバンクが日本一になった時、
選手と一緒にビールかけして、
子どものようにはしゃいでた孫正義氏と比べると、
あまりに大違いだ。
球団や選手やその家族に対する愛は、
ナベツネ氏からは感じられない。
この本によると、
清武氏がクーデターを起こしたのは、
一度決めてナベツネ氏の了承まで得たコーチ人事を、
鶴の一声でひっくり返されたことが最大の原因のようだ。
会見直前のナベツネ氏との電話のやりとりは、
生々しくて寒気がするほどだ。
新聞記者として長年、
他人の不正や不道理を追及してきた自分が、
不道理の側に回るか否か、
組織の中で踏み絵を迫られた時、
結局著者はああいう形をとったということか。
ただ気になったのは、
ナベツネ氏のことは細かく描かれているけど、
原監督の存在がとっても薄いこと。
様々な球団改革を行った著者だけど、
現場の信頼を得られていなかったのだとすれば、
著者もまた裸の王様だったのかと、
勘ぐられても致し方ない。
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