2012年3月24日土曜日

踏絵

一部で話題の「巨魁」(清武英利著、WAC)。

著者はジャイアンツの元GMで、
昨秋、
コーチ人事を巡るクーデター会見で、
あっさりクビになった人だ。

最近では、
朝日新聞が大々的に取り上げている、
ジャイアンツ選手の契約金問題の「ネタ元」として、
ナベツネ氏から「泥棒猫、ドブネズミ」と呼ばれたのが、
この人であることはもはや公然の秘密である。

タイトルの巨魁とは、
そのナベツネ氏の別称である。

まぁ何かと話題なので、
一応読んどくかと開いたら、
あまりに面白くて一気読みとなった。

著者が自分贔屓に書いちゃうのは致し方ないとして、
話半分としても、
清武氏がジャイアンツ改革に真剣だったことは、
否定できないだろう。

対してナベツネ氏はこの本の中では、
ジャイアンツを金儲けの道具としか見ておらず、
コーチや球団職員の名前はおろか、
二塁手とショートはどちらが一塁に近いかなんて、
野球のいろは以前のことも知らない御人だとなっている。

プロ野球球団の親会社のトップなんて、
そんなもんかもしれないけど、
ソフトバンクが日本一になった時、
選手と一緒にビールかけして、
子どものようにはしゃいでた孫正義氏と比べると、
あまりに大違いだ。

球団や選手やその家族に対する愛は、
ナベツネ氏からは感じられない。

この本によると、
清武氏がクーデターを起こしたのは、
一度決めてナベツネ氏の了承まで得たコーチ人事を、
鶴の一声でひっくり返されたことが最大の原因のようだ。

会見直前のナベツネ氏との電話のやりとりは、
生々しくて寒気がするほどだ。

新聞記者として長年、
他人の不正や不道理を追及してきた自分が、
不道理の側に回るか否か、
組織の中で踏み絵を迫られた時、
結局著者はああいう形をとったということか。

ただ気になったのは、
ナベツネ氏のことは細かく描かれているけど、
原監督の存在がとっても薄いこと。

様々な球団改革を行った著者だけど、
現場の信頼を得られていなかったのだとすれば、
著者もまた裸の王様だったのかと、
勘ぐられても致し方ない。

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