笠智衆っていう男優は、
ぼくにとっては「俺は男だ」で、
森田健作に剣道を教えるおじいさん、
ってイメージが強いのだけれど、
代表作といば、
やっぱり小津安二郎監督の「東京物語」なんだろうな。
映画技法的にあらゆる賛辞を贈られている、
世界映画史上の傑作らしいが、
ぼくには、
笠智衆演じる平山周吉の三男敬三が、
映画中で二度口にするこの言葉に尽きる。
「親孝行、したい時に親はなし。さりとて墓に布団は着せられず」
ある意味人類普遍の真実ってやつかなって思う。
年寄りが「今時の若者は」っていうのと同じ。
親と子は、
年齢差がある分、
世界へのたいしかたや死生観が違うし、
それは仕方がないんだろう。
たぶん本当に親孝行したいと思うのは、
自分が親になった時ではなかろうか?
ということは、
親になることのないぼくは、
きっと一生親孝行などしたいとは思わぬのだろう。
可哀想な母上(泣)→(嘘)
ところで、
東京物語は1953年の封切り。
ってことは、
敗戦からたった8年後のことである!
なんだかたった8年なのに、
映画の中の日本は景気がいいんである。
焼け跡の雰囲気なんか微塵も感じられない。
人々は仕事に励み、
熱海旅行を楽しみ、
たくましく活気がある。
さらにいえば、
こういう映画が公開され、
人々が楽しんでいたのである。
ちょうど今の「梅ちゃん先生」と、
同じぐらいの時代かしらん?