2012年7月15日日曜日

湾曲

五輪までもう一週間、
お待ちかねNHK「ミラクル・ボディー」が始まった。

初回は超人ウサイン・ボルト。

彼が脊柱側湾症だったなんて、
まったく知りませんでした。

背骨が曲がっているから、
彼の走り方は身体をくねらせるように独特で、
それ故太もも裏側の筋肉に過度の負荷がかかるのだという。

実際ボルトは若い頃、
肉離れに苦しめられたとか。

アテネ五輪やその後の世界陸上で惨敗後、
自国ジャマイカでは期待を裏切った彼に、
「引退しろ」と容赦なかったそうだ。

そこで彼とコーチは、
徹底して身体を鍛え、
病を克服しようとした。

その結果、
曲がった背骨は筋肉で覆われ、
太ももも、
負荷に耐えられるようになった。

北京五輪の100メートルで、
衝撃の世界新をたたき出し、
世界に名前を轟かせたのは、
その肉体改造を終えた後のこと。

ボルトは元来進化した肉体を持ち、
彗星のように出現した印象が強いけれど、
実は進化どころか、
陸上選手として致命的ともいえる病を抱え、
今なおその病と闘っているのだ。

しかし、
進化とは結局そのようなものなのかもしれない。

何かハンデがあって、
それを乗り越えようと必死で努力する。

その結果、
元の目標以上の結果にたどり着く。

そういった泥臭い根性物語こそ、
進化の本質かもしれない。

言い換えれば怪我の功名っていうこと。

番組の最後に語るボルトの台詞が泣かせる。

曲がった背中は僕に困難を与えた。
背骨が僕を育て、速く走れるようにしてくれた。
自分の肉体に感謝し、これからも受け入れていく。
生きていれば思うように行かない事もある。
もがいて前に進み続けて行く。

彼にはスタート時に、
右足が外側に膨らむという癖がある。

これも背骨が曲がっているからだ。

この癖が治った時、
人類史上初の100メートルを9秒4台で駆け抜ける、
ボルトの姿が見られるのかもしれない。

その舞台はもう開幕間近。

否が応でも期待は膨らむ。

●この話し、ここでも詳しいhttp://number.bunshun.jp/articles/-/237148?page=4


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