五輪までもう一週間、
お待ちかねNHK「ミラクル・ボディー」が始まった。
初回は超人ウサイン・ボルト。
彼が脊柱側湾症だったなんて、
まったく知りませんでした。
背骨が曲がっているから、
彼の走り方は身体をくねらせるように独特で、
それ故太もも裏側の筋肉に過度の負荷がかかるのだという。
実際ボルトは若い頃、
肉離れに苦しめられたとか。
アテネ五輪やその後の世界陸上で惨敗後、
自国ジャマイカでは期待を裏切った彼に、
「引退しろ」と容赦なかったそうだ。
そこで彼とコーチは、
徹底して身体を鍛え、
病を克服しようとした。
その結果、
曲がった背骨は筋肉で覆われ、
太ももも、
負荷に耐えられるようになった。
北京五輪の100メートルで、
衝撃の世界新をたたき出し、
世界に名前を轟かせたのは、
その肉体改造を終えた後のこと。
ボルトは元来進化した肉体を持ち、
彗星のように出現した印象が強いけれど、
実は進化どころか、
陸上選手として致命的ともいえる病を抱え、
今なおその病と闘っているのだ。
しかし、
進化とは結局そのようなものなのかもしれない。
何かハンデがあって、
それを乗り越えようと必死で努力する。
その結果、
元の目標以上の結果にたどり着く。
そういった泥臭い根性物語こそ、
進化の本質かもしれない。
言い換えれば怪我の功名っていうこと。
番組の最後に語るボルトの台詞が泣かせる。
曲がった背中は僕に困難を与えた。
背骨が僕を育て、速く走れるようにしてくれた。
自分の肉体に感謝し、これからも受け入れていく。
生きていれば思うように行かない事もある。
もがいて前に進み続けて行く。
彼にはスタート時に、
右足が外側に膨らむという癖がある。
これも背骨が曲がっているからだ。
この癖が治った時、
人類史上初の100メートルを9秒4台で駆け抜ける、
ボルトの姿が見られるのかもしれない。
その舞台はもう開幕間近。
否が応でも期待は膨らむ。
●この話し、ここでも詳しいhttp://number.bunshun.jp/articles/-/237148?page=4。