シリアで銃撃に遭って死んじゃった、
戦場ジャーナリスト山本美香さん。
ずっと命がけで紛争地帯の取材をしてきて、
平和な世界の実現を望んできたであろうに、
そのメッセージは、
彼女の取材そのものというより、
自分の死によって最も広く知られるようになってしまったのは、
はなはだ不本意なことだったかもしれない。
冒険家と同じように、
彼女は死を覚悟してなどなく、
無事に帰ってきてこそのジャーナリストだという意識を、
非常に強く持っていたようだ。
命知らずではなく、
でも、
命がけで取材を続けてきた彼女に、
心からの尊敬の念を抱きながら、
それでもやはり矛盾を感じてしまうのは、
彼女を死ぬまで駆り立て続けた、
紛争地帯の取材という行為だ。
彼女は世界の平和を願っていた。
それは真実だろう。
でも、
世界の紛争地帯でたくましく生きる人々に、
彼女が大いなる魅力を感じていたのもまた事実だと思う。
日本はしばしば平和ボケしていると言われる。
彼女を含め世界の紛争の最前線を知っている人には、
平和ボケした日本人は、
取材対象として魅力がなかったかもしれない。
でも彼女が望む平和が実現したら、
人間はこうやって平和ボケするのである。
それがぼくの言う矛盾である。
彼女は志半ばで死んだ。
でも平和ボケした日本では、
志など持っている人じたいが少数で、
ましてや志を成し遂げて死ぬ人など、
ごくごく少数に違いない。
彼女が銃撃される直前まで撮影していたという、
ビデオを見た。
女性や赤ん坊が暮らしている、
あの市街地で、
よもや銃撃戦が起きようとは、
ぼくには想像できなかったし、
彼女らにも予想外だったからこそ、
撃たれてしまったのだろう。
今のシリアには、
戦場ジャーナリストの常識でさえ通じない、
異常な状態になっているということだ。
そんな現実の世界の、
あの町で暮らす人々、
それを取材する彼女。
何と生き生きしていることか。
本当に皮肉なことなんだけど。
●ぱっと見てそう思ったので「痩せた?」ってたずねたら、すんごい喜ばれた。思っても見なかったリアクションだったので驚いた(笑)。頑張って下さい。