2009年8月26日水曜日

信頼

何気なく途中から見始めたテレビの映画に、
いつの間にか引き込まれ、
つい最後まで、
ということがよくある。

借りてきたDVDを、
結局見ないまま返却したり、
映画館まで足を運んで落胆したりすることが少なくないだけに、
不思議でしょうがなかったが、
最近TUTAYADISCASで半強制的に月4本見るようになり、
なんとなくその理由が分かってきた。

「期待」と「時間」がポイント。

期待するということは、
もうその時点で力が入っているということ。
映画館はもとよりレンタルでも、
しっかり最初から最後まで観ようと、
力が入る。

その点、
たまたまつけたテレビの映画は、
はなから期待はない訳だし、
時間的にも元々途中からなのだし、
つまらなければいつスイッチを切ってもいい。

DISCASのシステムにもテレビ映画的な面があって、
とりあえず予約しておいたDVDが、
結構ランダムに送られてくるから、
あまり何も考えずにパソコンで少しずつ見る。
分からなくなれば、
後から見返すこともできる。

おまけに、
返却期限というのが基本的にない。
今借りている2枚を送り返さないと、
次が送られてこない仕組みだからだ。


と、
これだけ前ふりをして、
「ディア・ドクター」の西川美和監督による、
前作「ゆれる」が本題だ。

この監督は、
人間心理の複雑さをあぶり出すのが巧みだという評価だが、
本作においてもその一端がうかがえる。

心底は疑っているのに、
疑っていないと信じる。
なぜなら兄弟だから。

兄弟は、
親や配偶者や子供と置き換えてもいい。

もちろん、
こんな「信頼」は本当の「信頼」ではないわけで、
その欺瞞性が、
ある事件をきっかけにして露わになる。


とてもよく出来た作品だと思うけど、
「映画」というものの特性を考えると、
傑作とは言い難い。

なぜなら、
たぶん繰り返し見ないと、
この作品の意図がつかめないからだ。
他のブログの感想にもあったけど、
「後出しじゃんけん」的要素が多く、
「じゃああれは一体何だったの」という疑問が、
一回見ただけでは解消されないのだ。

だから、
普通映画館で一回しか観ない(最近は観れない)客には、
極めて不親切だと言える。

力の入った客が、
とり合えず一回観て分かるというのが、
「映画」への信頼ではないのか。
繰り返すほどに深みが増すというのは歓迎だけど、
一回見ただけでは分からないというのは、
少なくとも商業映画としては失格ではなかろうか。

だから批評家には高い評価でも、
観客には低調というような、
評価の齟齬が生じるのだと思う。


「映画」の一番の醍醐味かつ難しさは、
その一回性にこそあるのだと思う。
その縛りをなしにするなら、
さぞや難解かつ深みのある面白い映画は作れるだろうが、
そんな映画を映画館で見たいだろうか?

一回で分かるけど凡庸な作品と、
繰り返し見ないと意味が分からない作品。

「映画」を名乗れるのはどちらだろう。

●無論、映画慣れしている人の方が一回見ただけでも理解度は高いはずで、そのへん難しいけど。それでも「ゆれる」は、一回では論理的に分からない(分かる人は相当記憶力がよくて再構成能力が高い)。意図的か否か、そのように出来ている。

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