「レワニワ」という4文字を読んで、
とりあえず「レバニラ」を想起したのだけど、
「ポケットの中のレワニワ」(伊井直行著、講談社)を読んだら、
全く関係ないことがわかった。
それが何かはともかく、
この小説は単純にいうなら、
「アガタ」というワーキングプワの青年と、
「ティアン」というベトナム難民の女性とのラブストーリーだ。
「レワニワ」は、
二人を繋ぐキーワードになっている。
もうひとつ、
この小説のキーワードを挙げるなら、
それは「難民」だろう。
世の中の流動性が増して人間関係が希薄になり、
ボート・ピープルでなくたって、
多くの人が自分を係留できる場所が確保できなくなっている。
ネットカフェで寝泊まりするほででなくても、
会社にも、
学校にも、
隣近所にも、
ひょっとしたら家族の中にも係留場所がない、
精神的難民が日本の至る所にいるのだろう。
「自分探し」というけれど、
それはつまり、
「自分でなければならない理由探し」なのだと思う。
アガタとティアンが、
実は小学校の同級生だという設定は、
「1Q84」と似ていて興味深い。
かつて同じ教室で学んだという、
ただそれだけの事実。
それは取り換えようのない事実であり、
そこには確かに自分を係留させることができるだろう。
ふと考えると、
「レワニワ」と1Q84の「空気さなぎ」は、
「自分でなければならない理由」の暗喩かもしれない。
1Q84の過剰なほどの装飾をはぎとると、
ポケットの中のレワニワになるのかも。
しかも著者は春樹と同世代。
文体は若々しく文章も読みやすい。
一気に上下巻を読んだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿