2009年8月21日金曜日

係留

「レワニワ」という4文字を読んで、
とりあえず「レバニラ」を想起したのだけど、
「ポケットの中のレワニワ」(伊井直行著、講談社)を読んだら、
全く関係ないことがわかった。

それが何かはともかく、
この小説は単純にいうなら、
「アガタ」というワーキングプワの青年と、
「ティアン」というベトナム難民の女性とのラブストーリーだ。
「レワニワ」は、
二人を繋ぐキーワードになっている。


もうひとつ、
この小説のキーワードを挙げるなら、
それは「難民」だろう。

世の中の流動性が増して人間関係が希薄になり、
ボート・ピープルでなくたって、
多くの人が自分を係留できる場所が確保できなくなっている。

ネットカフェで寝泊まりするほででなくても、
会社にも、
学校にも、
隣近所にも、
ひょっとしたら家族の中にも係留場所がない、
精神的難民が日本の至る所にいるのだろう。

「自分探し」というけれど、
それはつまり、
「自分でなければならない理由探し」なのだと思う。


アガタとティアンが、
実は小学校の同級生だという設定は、
「1Q84」と似ていて興味深い。

かつて同じ教室で学んだという、
ただそれだけの事実。
それは取り換えようのない事実であり、
そこには確かに自分を係留させることができるだろう。


ふと考えると、
「レワニワ」と1Q84の「空気さなぎ」は、
「自分でなければならない理由」の暗喩かもしれない。
1Q84の過剰なほどの装飾をはぎとると、
ポケットの中のレワニワになるのかも。

しかも著者は春樹と同世代。
文体は若々しく文章も読みやすい。
一気に上下巻を読んだ。

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