ブログや書籍で「○○日記」というタイトルは星の数ほどあるが、
他人に読まれることを前提としないで書かれた、
いわば正真正銘の日記としては、
「アンネの日記」ほど多くの人に読まれたものはあるまい。
ぼくは小学生の時に、
たぶん姉が読書感想文用に買ったのであろうやつを、
パラパラと読んだことしかない。
その時の第一印象は、
アンネ・フランクの写真が「可愛いい」と思ったのと、
本棚で隠された秘密の扉の奥にある、
「後ろの家」での暮らしへの憧れだった。
その次に残っている印象は、
1944年8月1日、
強制収容所に連行される3日前の最後の記述。
中身を覚えていないのは、
それまでの内容と大差なかったからだと思う。
本人が「これが最後」だと認識していないのだから当然だ。
しかし、
「それが最後」ということが分かって読むと、
その最後の日記は特別な意味を持ち始めた。
中身ではなく、
唐突に終わる日記の切断の感触。
上手く表現できないけど、
後ろから日本刀で首をいきなり切り落とされたら、
きっとそんな風に感じるのではなかろうか。
それから数十年後、
ぼくはアムステルダムで「憧れ」の本棚の前に立った。
その時の記憶は今も残るが、
日記の切断の感触は、
それとは全く違う、
独特の余韻を放つ。
自分でも不思議なのは私がいまだに理想のすべてを捨て去ってはいないという事実です。だって、どれもあまりに現実離れしすぎていて到底実現しそうもない理想ですから。にもかかわらず私はそれを待ち続けています。なぜなら今でも信じているからです。たとえ嫌なことばかりだとしても人間の本性はやっぱり善なのだと。(1944年7月15日)
少女の信念を断ち切った刃よ!
●NHK教育で「アンネの日記」の5回連続ドラマが始まった。写真はウィキペディアから引用しました。
0 件のコメント:
コメントを投稿