人間の体は60兆個の細胞でできている。
でも、
それぞれの細胞は、
自分が形作っている体の全体像は知らない。
あくまで体の部分として与えられた役割を、
黙々とこなしているだけだ。
とはいうものの、
「世界は分けてももわからない」(福岡伸一著、講談社現代新書)を読むと、
そのあまりに精妙で見事な仕組みに驚かされる。
元は一個の受精卵が、
細胞分裂を繰り返す過程で、
少しずつ進路を割り振られ、
手足や臓器などに分化していく。
この流れは、
始めは大きな流れだったものが、
次第に枝分かれして、
細い水流になっていくような具合で、
決して源流にさかのぼることはできない。
ところがES細胞というやつは、
分化した細胞が何にでもなれる状態にリセットされている。
そこが「万能」といわれる所以だ。
しかし、
何にでもなれるということは、
一歩間違えれば「無目的」につながる。
事実、
ES細胞といえど、
TPOをわきまえないと、
その細胞は何にもることができず、
ただダラダラ分裂だけを繰り返すのだそうだ。
それはまるで、
幼稚園児を大学の授業に参加させるようなものだ。
肝心なのは、
ES細胞の進路を適切に決めてやること。
世界中の科学者がそれに取り組んでいる。
適切な進路を与えること、
見つけること。
その難しさは、
細胞も人間も全く同じなわけだ。
この本の白眉は、
細胞のガン化を突き止めようとする科学者の奮闘と、
その過程で起きた前代未聞のねつ造事件を紹介しているところだが、
ぼくにはその第8章を含め、
すべてが面白かった。
それはまた別の機会に。
●珍しく月曜日に元町に行ったら、珍しくだれとも会話することなく終わった。
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