質屋というのは、
金を返せなければ質種が流されるだけだから、
いわゆる「借金地獄」に陥る心配がない。
学生時代、
ちょっと高価な万年筆を何度か質入れした。
月末になると、
それで数千円を手に食いつなぎ、
金が入ると引き出す。
結局、
最後には万年筆は流れてしまったのだが、
今となっては懐かしい思い出だ。
実は学生時代に50万円借金したことがある。
就職試験までの半年間、
バイトをすべて辞め、
その金で食いつなぎ、
すべての時間を勉強に充てた。
そのかいもあって、
何とか就職して借金も1年ぐらいで完済した。
危ない橋だったと思うけど、
それも今では良い語り草だ。
借金はそれが最初で最後。
家も車も手放したから、
ローンという名の借金もない。
葬式代ぐらいの貯金もあるから、
今死んでも、
金の面で見れば人生はチャラだ。
しかし、
金じゃない人生の負債は相当に抱え込んだままだ。
どうしても返さなければ気が済まない、
心の負債があるからこそ、
生きているようなものだとも言える。
この身が質種のような気分だ。
万年筆の二の舞は避けたい。
質流れはご免だ。
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