2009年8月18日火曜日

深化

「ワー」っという歓声で目が覚めると、
テレビにボルトが映っていた。

9秒58は確かに驚異的な記録だ。
その瞬間を見逃したのはしかし、
それほど残念ではなかった。

あの北京での「欽ちゃん走り」ゴール以来、
彼が本気で走りきればそうなるだろう、
みたいな予感は十分あった。

だから今回の走りは、
あの北京で起きたことが、
紛れもない事実だったことを、
世界が再確認したということだ。


マスコミでは、
ゲイやパウエルという好敵手がいたからこその記録、
みたいな言い方をしているけど、
ぼくの印象では、
彼は完全に次元が違う。

恐らく彼は人類の進化そのものだ。

「人間がこんなに速く走れることが分かった。残念ながらオレじゃなかったが」

破れたゲイの言葉は全くの本音だろう。

40年かかって0秒26しか縮められなかった記録が、
わずか1年で0秒11。

進歩より進化という意味で、
たぶん、
人類が月に行ったことより凄い。



ところで、
先日のBS1のスポーツ大陸で、
岩崎恭子を取り上げていた。

14歳の彼女がバルセロナ五輪で、
200メートル平泳ぎ金に輝いたのは、
16年前のこと。
世界が仰天した。

「今まで生きてきた中で、一番幸せです」

今でも鮮明に覚えている科白だ。

番組は、
彼女があの当時、
どれほど急速に進歩したか、
そして、
その後の低迷と復活のドラマを、
本人の追想を交えて紹介していて、
ぼくは思わず涙線が緩んだ。

一時は日本代表からも外された彼女が、
再びアトランタ五輪に出場し、
10位に終わるまでのドラマ。

順位は下がっても、
彼女はその4年で、
人間として深化したのだ。

たとえ世界は仰天しなくても。

●今夜はイシンバエワに付き合うのかなぁ。

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