「ワー」っという歓声で目が覚めると、
テレビにボルトが映っていた。
9秒58は確かに驚異的な記録だ。
その瞬間を見逃したのはしかし、
それほど残念ではなかった。
あの北京での「欽ちゃん走り」ゴール以来、
彼が本気で走りきればそうなるだろう、
みたいな予感は十分あった。
だから今回の走りは、
あの北京で起きたことが、
紛れもない事実だったことを、
世界が再確認したということだ。
マスコミでは、
ゲイやパウエルという好敵手がいたからこその記録、
みたいな言い方をしているけど、
ぼくの印象では、
彼は完全に次元が違う。
恐らく彼は人類の進化そのものだ。
「人間がこんなに速く走れることが分かった。残念ながらオレじゃなかったが」
破れたゲイの言葉は全くの本音だろう。
40年かかって0秒26しか縮められなかった記録が、
わずか1年で0秒11。
進歩より進化という意味で、
たぶん、
人類が月に行ったことより凄い。
ところで、
先日のBS1のスポーツ大陸で、
岩崎恭子を取り上げていた。
14歳の彼女がバルセロナ五輪で、
200メートル平泳ぎ金に輝いたのは、
16年前のこと。
世界が仰天した。
「今まで生きてきた中で、一番幸せです」
今でも鮮明に覚えている科白だ。
番組は、
彼女があの当時、
どれほど急速に進歩したか、
そして、
その後の低迷と復活のドラマを、
本人の追想を交えて紹介していて、
ぼくは思わず涙線が緩んだ。
一時は日本代表からも外された彼女が、
再びアトランタ五輪に出場し、
10位に終わるまでのドラマ。
順位は下がっても、
彼女はその4年で、
人間として深化したのだ。
たとえ世界は仰天しなくても。
●今夜はイシンバエワに付き合うのかなぁ。
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