新型インフルエンザやラカンに関する新書を読んでいて、
最近相当に頭が凝ってきているのに気づいた。
衝動的に柔らかい小説を読みたくなって、
元町の海文堂に入る。
とりあえず面白いものをと思い、
まず奥田英明の新刊が浮かんだのだけど、
バッグが重くなるのが嫌でパス。
次いで、
ほとんど思いつきで、
「終末のフール」(伊坂幸太郎著、集英社文庫)を買った。
彼の作品なら面白いという点では、
まずハズレないだろうという読みだ。
果たして思惑通り「当たり」だった。
2日で一気に読み終えた。
8年後に小惑星が地球に衝突することが判明して、
それから5年後の仙台という設定だ。
つまり3年後に人類は滅亡するという訳で、
先日見た「2012」を思い起こさせる。
そんな状況で生きる人の姿を、
仙台のヒルズタウンという住宅街を舞台にして、
「○○の○ール」という短編8つで構成してある。
本当は内容のことに触れようと思っていたのだが、
最後の解説がとても面白かったので紹介する。
末期患者の死に対する心の動きは5段階に分けられるそうだ。
まもなく死ぬことが信じられず(否認)、なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向け(怒り)、次にどうにか生き続けることはできないかと何かにすがろうとした(取り引き)のち、死という現実の前になにもできなくなり(抑鬱)、最後にはそれを受け入れる(受容)、というプロセスである。
小説に即して言えば、
全人類が末期がん患者状態に陥るという状況を、
小惑星が衝突という設定に置き換えているわけだ。
5年の間に人類は「否認」から「受容」へと、
一気に進む。
登場人物たちは、
町を襲った略奪や暴力が収まって、
小惑星の衝突まであと3年という「受容」の状況にあり、
それぞれの残された「生」に向き合う。
「否認」から「受容」へというプロセスは、
末期がん患者や小惑星の衝突という事態でなくても、
ぼくらの人生では起きうる。
ぼくの場合に当てはめてみれば、
3年でこのプロセスは進んだ。
「受容」という今の心境の中で、
ぼくはこれからの余生をどう過ごすだろう。
●ちなみに先の5段階という分類は「死ぬ瞬間ー死とその過程について」(E・キューブラー・ロス著、中公文庫)からの孫引きだそうだ●タイガーの醜聞は目に余るが、どうしてこれまで見過ごされてきたのか、それが最大の不思議だ。
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