2009年12月25日金曜日

聖夜

夕方、
住吉のジャンカラに行った。

受付には先客が一人。

背中しか見えないけど、
間違いなく若い男の子で、
よれたジャージにパーカー姿。
手にコンビニの袋だけを持っている。


「30分」

彼はそう言って個室へ向かった。


何か怪し気。

まさか硫化水素を発生させたりしないだろうなぁ、
などとあらぬ想像をしながら後に続く。


部屋は彼の真向かいだった。

すりガラス越しに、
彼がストレッチしているのが分かった。


間もなく彼の歌声が聞こえてきた。

知らない歌だったけど、
たぶんビジュアル系っぽい。
たぶん下手ではない。

感情を込めて熱唱している。
身振りも入っているかもしれない。

きっと今夜、
彼女の前でキメるのだろう。


硫化水素なんて、
馬鹿な妄想だった。

言うまでもなく、
ぼくの方がよっぽど怪しげだ。


帰宅したぼくは、
71歳の母と夕食を食べ、
人の背丈ほどあるツリーを見ながらケーキを食べた。

そして今年も明石家サンタを一人で見た。


みんな不幸を抱えながら、
笑い飛ばして明日を迎える。

そしてぼくはいつかの聖夜に、
必ず歌うと誓う。


●ファンレターを頂戴した。たはしろ初の快挙。2009Xmas。ぼくは十分幸せ者だと思う。ありがとう。

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