2011年10月3日月曜日

心理

今日のNスペ「巨大津波・水没した町」は秀逸だった。

先日見てきた宮城県名取市閖上地区。

700人もの犠牲者を出したこの海岸沿いの町で、
地震から津波が来るまでの1時間10分の間に、
人々がどう行動したかを、
時間を追って克明に検証していた。

地震発生から10分間、
人々の動きは緩慢だったという。

とんでもない揺れ。
建物は大きく壊れ、
液状化現象もすでに発生していた。
にもかかわらず町は静かだったという。

ある被災者は、
家の壁がステレオの折れた脚を直そうとしていた。

ひどい被害が出ているにもかかわらず、
多くの人が避難しようとしなかった、
こういう現象は、
「正常性バイアス」と呼ぶらしい。

危険な状況ではないと思い込む。

危険が迫っても避難したがらない。

それが人間だ。

一方で、
こうした異常事態に、
一人暮らしの高齢者を避難させようとした人も多くいた。

異常事態が起きた時、
自分の命を顧みず他人を救おうとする、
「愛他行動」が急激に増えるのだという。

今助けないとこの人は死んでしまう。
そう思った時、
自分の命はあまり考えず、
助けるという行動に集中する。

それも人間だ。

中には津波にいち早く気づき、
必死に危ないと呼びかけた人もいたが、
人々の動きは緩慢だった。

ここでまた、
もう一つの心理が生まれていた。

「同調バイアス」

とりあえず周囲と同じように動けば安心と勘違いする。
災害時に顕著になる心の動きだという。

そして津波が襲来する。

双子の娘と避難した主婦の話が生々しかった。

「ママ、お空汚いけどあれ何」

娘の言葉に振り返ると、
それが津波だった。

また娘が言う。

「ママ、今度は下からお家とか流れてきているよ」

主婦はふたりの娘の襟首をつかんで間一髪、
避難所の閖上中学校に飛び込む。

しかし階段は混雑していて、
仕方なく一階の廊下を突っ切り、
奥の扉をあけると、
両側から水が来ていた。

子供の手を握って母は「ごめんね」と言った。

ここまで逃げてきたけれど、
守れなかった。

そう思ったという。

3人はそれでも、
一階の音楽室に逃げ込み、
階段教室の上段でなんとか助かった。

正常性バイアス

愛他行動

同調バイアス

大災害時に人が陥りやすい罠。

助かった人は、
この罠にかからなかったか、
他人よりいち早く現実を知り、
罠から逃れた人たちだろう。

700人の犠牲者が遺してくれた、
貴重な教訓だ。

大切にしたい。







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